2023 Fiscal Year Research-status Report
人新世の思想史研究:19世紀中葉~両戦間期のエコノミーとエコロジーの概念史
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21K00091
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
桑田 学 放送大学, 教養学部, 准教授 (20745707)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 稀少性 / 有機経済 / 停止状態論 / エコノミーの脱自然化 / 成長パラダイム / 人新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、およそ19世紀の産業革命期から両大戦間期のイギリスにおいて展開されたエコノミーとエコロジーをめぐる思想史を軸に、「人新世」という時代認識の淵源を探究することを目的としている。人新世の端緒とされる石炭の大量燃焼に依存する「化石資本制経済」の出現を、同時代の人文知や社会科学的な知がどのように批判的分析の対象としてきたのか、という歴史の解明が中心的な課題である。22年度は本研究の中心的な分析対象であるジョン・ラスキン(1819-1900)、パトリック・ゲデス(1854-1932)、フレデリック・ソディ(1877-1956)の3者のポリティカル・エコノミーの思想を軸とした単著『人新世の経済思想史』を上梓したが、23年度はこれをふまえて、より広いコンテクストから上記の思想家の歴史的位置や思想的意義を浮き彫りにするため、主に2つの点について検討を行った。 第1に、ラスキン以前の時代にさかのぼり、化石資本主義成立以前の「有機経済」における自然の有限性や経済-環境問題をめぐる思想の検討である。これについては環境史や科学史の視点にもとづく経済思想史研究の動向を調査し、主にアダム・スミスやトマス・ロバート・マルサスなど18~19世紀の古典派経済学を中心にその自然認識について検討を進めた。 第2に、現代の人新世をめぐる人文学的研究についての文献調査である。人文学的な研究ではヨーロッパの植民地支配や資本制経済下での資源・人的収奪と自然破壊・環境汚染との構造的連関が焦点化されてきたが、そのような視点からとくにGDP成長を志向するようになった世界大戦後の「経済」認識の問題が明らかにされる必要がある。 上記2つの検討については、次年度以降に成果報告をまとめることとしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
22年度内に当初予定していた研究対象(時期や人物)の検討と整理がひとまず完了し、それらを著書(単著)にまとめられたため、当初の予定より対象時期を広げた文献調査の進展がみられた。しかし一方で、23年度は新たな研究成果の発表が十分に行えず、また所属研究機関の異動に伴って日常業務が大きく変化したことから、予定していたラスキンやゲデスのギルド運動や社会改良の実践に関する国外での資料・文献調査についても断念せざるを得ず、次年度に持ち越すこととなった。そのため、進捗状況については「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の補助事業期間延長が承認されたため、予定していた国外での資料・実地調査を進め、引き続き研究の取りまとめに向けた作業を続ける。また、環境・経済思想史にかかわる新たな研究成果の発表もできるだけ早い時期に行う予定である。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の異動に伴い日常業務に大きな変化が生じたことから、予定していた出張を取りやめ、その分の額が未執行となった。次年度に国外での資料・実地調査の費用として支出する予定である。
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Research Products
(3 results)