2023 Fiscal Year Research-status Report
古代ギリシア医学思想における病いの語り─エピデミアイをめぐる環境と倫理の問題
Project/Area Number |
21K00095
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
木原 志乃 國學院大學, 文学部, 教授 (10407166)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 西洋古代哲学 / 西洋古代医学 / ヒッポクラテス / 精神医学 / 夢 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、西洋古代医学における夢について、および西洋古代の精神医学の語りについて、引き続き検討した。まず令和4年度からの流れで、京都大学西洋古典学連携共同研究会(IJACS)に参加し、異なる専門領域に属する西洋古典学研究者たちとともに、「夢」をテーマに情報や意見を交換し、連携を深め、学際的な観点から共同で研究をおこなった(京都大学大学院文学研究科に属する研究会責任者4名、河島思朗氏、藤井崇氏、早瀬篤氏、津田謙治氏、及び東海大学の中村るい氏、東北学院大学の渡邉蘭子氏の計6名とともに研究活動を行った)。令和4年には10回の研究会(内令和4年の日本西洋古典学会・第 72 回大会における西洋古典学フォーラムとの共催)、令和5年には8回、今年に入ってから既に4回の研究会を開催しており、令和5年10月12日に「夢と癒し」という題目で発表した。また、令和5年3月末に行った古代史研究会にて研究発表を行った古代精神医学の語りのテーマを掘り下げ、まとめ直した論文を研究誌に投稿中である。これら令和5年度の成果をかたちにすべく活動継続中なので、その成果は令和6年度に報告する予定である。さらに令和5年度としては、令和4年に執筆した古代医学のホリズムについての論文が哲学科の合評会にて論評され、また立正大学の田坂さつき先生に拙著『流転のロゴス』を演習で何度か取り上げていただく機会もあった。さらにヘラクレイトスと美学芸術学との繋がりに注目した多摩美術大学の研究会と連携する機会もあり、これまでの研究を見直すとともに、これまでにない新しい交流を持つことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を取りまとめている段階で、論文等の発表は令和6年度以降となる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、引き続き古代ギリシア医学と哲学テキストを精査し、そこにおける夢と精神医学に関する語りがどのようなものだったかを考察する。アスクレピオス神殿での医療行為とヒッポクラテス医学との繋がりを検証し、また夢という事象の経験的な側面と神的な側面とが医学史および哲学史的展開の中でいかに語られていたかについて明確にし、また精神医学に関しては、「流行病」について書かれたヒッポクラテス文書を中心に取り上げ、古代医学思想の語りの独自性を示すことが目指される。
|
Causes of Carryover |
研究に関わる書籍購入において、とりわけ古代医学関連図書は単価が高いため、金額の調整が必要となり次年度使用額が生じた。
|