2023 Fiscal Year Research-status Report
新プラトン主義思想の系譜におけるショーペンハウアー哲学の位置づけと意義の究明
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21K00096
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
堤田 泰成 上智大学, 文学部, 研究員 (30897822)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エリウゲナ / テオファニー / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目にあたる令和5年度は、ショーペンハウアー哲学におけるヘノロジー(一者論)的思考がどのような新プラトン主義的思想家からの影響のもとに形成されたのかを文献的に解明することに重点を置いた。とりわけ、9世紀の新プラトン主義的キリスト教思想家ヨハネス・(スコトゥス・)エリウゲナの主著『ペリピュセオン(自然について、自然区分論)』を論じた、「スコトゥス文選(Chrestomathia Scotiana)」と題されるショーペンハウアーの未公刊の草稿を中心に検討を行った。 「スコトゥス文選」におけるショーペンハウアーのエリウゲナに対するコメントを、当時彼が実際に参照していたゲイル版(De divisione naturae, Oxonii: E. Theatro Sheldoniano, 1681)の箇所と突き合わせながら読解し、ショーペンハウアーがエリウゲナの「神の無知」を自らの「盲目的な意志」の概念と重ね合わせて理解していたこと、またエリウゲナの「テオファニー(神の顕現)」を「テレマトファニー(意志の顕現)」という名称のもとに独自に読み替えていたことなどを確認した。またショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』初版の自家用本に記されたエリウゲナへの言及も併せて検討することで、ショーペンハウアー哲学の「意志の自己認識」に新プラトン主義・キリスト教における「〈一者/神〉の自己認識」との共通性が見出されることを明らかにできた。 本年度はこうした成果を新プラトン主義協会の学術大会で発表した他、ルーマニアで開催された国際学会4th World Congress on Logic and Religionにてショーペンハウアーとキリスト教芸術に関する発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はショーペンハウアーの思想形成における新プラトン主義からの影響を、彼が参照していた原典資料に基づきながら実証的に考察することを基本方針としている。これはショーペンハウアーと新プラトン主義との思想的親近性を単なる比較思想的な考察に止めないための予防線であるが、その意味においても今回、ショーペンハウアーの新プラトン主義受容の一端をエリウゲナ・「スコトゥス文選」という具体的な思想家とテクストから解明することができた意義はきわめて大きい。今後も同様にショーペンハウアーと新プラトン主義の影響関係をさまざまな資料から読み解くことで、19世紀初頭のドイツ思想界における新プラトン主義思想の伝播と受容、またその後の新プラトン主義思想の系譜の展開の解明がなされるものと期待できる。以上のような理由から、進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果からショーペンハウアー哲学における新プラトン主義・ヘノロジー的思考を比較的明瞭に見出すことができたため、今後はショーペンハウアーに影響を受けた19世紀末の哲学者・思想家を新プラトン主義の伝統と系譜を汲むものとして新たに位置づけ、再評価することも視野に入れて研究を進めていく。とりわけ、「ショーペンハウアー学派」と呼ばれる哲学者・思想家たちがショーペンハウアー哲学におけるヘノロジー的思考をどのように受容していたのかを重点的に解明し、新プラトン主義思想の伝播と受容をより俯瞰的な観点から捉え直すことを試みる。そのためにも引き続き文献・資料の地道な調査、国内外における学会での成果発信と意見交換に努め、研究のさらなる推進を図ることにしたい。
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Research Products
(6 results)