2021 Fiscal Year Research-status Report
ラカンにおけるフロイト理論の受容と展開の思想史的再検討ー反還元主義という視座から
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21K00104
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Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
河野 一紀 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30738050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジャック・ラカン / ジークムント・フロイト / 精神分析 / 反還元主義 / 精神医学 / 無意識 / 決定論 / 認識論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、従来は「精神分析以前」と総括されてきたジャック・ラカンの1930-40年代の思索から反還元主義という視座を抽出し、この視座がフロイト理論の受容や1950年代の「フロイトへの回帰」、さらにはそれ以降の精神分析の理論・制度的刷新に一貫して認められるという事実を明らかにすることにある。 研究実施計画では、2021年度は、1930-40年代のラカンの仕事におけるフロイト受容の内実を確認すること、ラカンにおける反還元主義の含意とその認識論的射程を明らかにすること、そして、反還元主義という視座をもとに精神医学から精神分析へのラカンの思索の基軸の変化を描き出すことを予定していた。 以上の目的・計画に沿って、次の3つの研究をおこなった。①1930-40年代のラカンにおける無意識概念の取り扱いを概観し、ラカンがフロイト的無意識の独創的な読み替えへと至る道筋を示した。これについては、追手門学院大学学生相談室紀要に論文として発表した。②学位論文おける心理-器質の平行論批判とラカン自身が擁護する平行論の検討を通じて、その反還元主義の含意を示した。これについては、梅花女子大学心理こども学部紀要に論文として発表した。③1930-40 年代にかけてのラカンとアンリ・エーの歩みを踏まえながら、1946年の心的因果性についてのコロックでの両者の相違を明らかにすると同時に、「フロイトへの回帰」を提唱する以前のラカン理論の位置づけを確認した。これについても、日本ラカン協会機関誌に論文として発表した。 以上の研究成果を踏まえて、2021年度は、当初の目的・計画を達成する研究を十分に行うことができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ禍のため、予定されていた海外調査が実施できなかったものの、「研究実績の概要」で示した通り、当初の目的・計画に概ね沿って、ラカンの初期の思索から反還元主義という視座を抽出し、これをもとにフロイト理論の独自の受容と「フロイトへの回帰」へと至るラカンの思索の歩みを解明することができた。 また、2021年度には、ラカンの思索における社会的なものの位置づけについての研究成果も得られ、これは2022年度に研究予定であるラカンの集団理論についての研究の一部となることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
反還元主義という視座が、「フロイトへの回帰」を経て、その後のラカンの思索の展開に与えた影響について、とりわけパス制度に注目して解明する。同時に、フロイトとラカンの集団理論を踏まえつつ、精神分析家の養成・訓練にかんする両者の考えの認識論的立場の異同を明らかにする。さらに、サントーム概念が提出されたジョイス論(1975-76)の検討を通じて、無意識と症状についての概念的更新の認識論的含意を解明する。
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Research Products
(6 results)