2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00109
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今泉 秀人 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (00263343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
好並 晶 近畿大学, 総合社会学部, 教授 (90510503)
阿部 範之 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (20434681)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国 / 文化大革命 / 映画 / 文学 / 小説 / 物語論 / 集団的記憶 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究実績として、研究分担者の阿部範之には、20世紀から21世紀の台湾映画を考察の対象とした「映画監督としての鈕承沢と2000年代以降の台湾商業映画の変遷」『野草』中国文芸研究会、106+107合併号(207-231頁)2021年9月および、21世紀の中国語圏映画をめぐる比較文化的な論考「2000年代以降の台湾映画における中台市場への眼差しーー金馬奨、文創、新型コロナを巡って」『ユリイカ』53(9)(165-175頁)2021年8月がある。 また、もうひとりの研究分担者の好並晶には、映像メディアと教学実践を結びつけた実践記録「いま、改めて〝生の感覚〟を取り戻すためにーーアニメーションを用いた教学実践ーー」『渾沌』近畿大学大学院総合文化研究科紀要、18号(199-216頁)2021年8月および、本研究のメンバー相互の対話的な書評、「論評:阿部範之「馮小剛が映し出す主旋律の外の記憶」『野草』中国文芸研究会、106+107合併号(255-258頁)2021年9月がある。 さらに研究代表である今泉秀人「教授作家ーー西南連合大学の沈従文」『野草』中国文芸研究会、106+107合併号(91-118頁)2021年9月、および「植民地の記憶ーー鍾理和「原郷人」の広がり」『二つの時代を生きた台湾 言語・文化の相克と日本の残照』三元社(175-204頁)2022年1月が挙げられる。 いずれも中国における文化大革命と映画を直接結びつける内容を持つものではないが、中華民国期から21世紀の同時代中国社会(中華人民共和国および台湾)と文化表象、そして文学テクストや映画などのメディアをめぐる基礎的かつ発展的な内容をもつものであり、本研究の基礎研究期間に必要な研究実績として今後の本研究の発展に大いに裨益するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2021年における進捗の状況は概ね順調に推移した。今年度はまず、共同研究の初年度として、今後3年にわたる科研費補助を受ける本研究の具体的な計画をメンバー相互で確認するところから始まった。研究課題として「文革映画史」構築という、非常に大きな目標を持つ本研究ではあるが、この3年間を映画史構築のための基礎的研究の準備期間と位置づけた。そして、すでに科研費申請用に用意され提出した研究計画に則り、1)「文革映画」の対象となる映画作品選定の見直しと不足分の収集をすること、また2)文革を描いた映画作品およびその原作となった小説などの文学作品に関する研究文献リストを作成すること、3)わたしたちの文革映画史構築の理論的な枠組みを考え、実行する上での最も重要な先行研究である許子東『重読「文革」』人民文学出版社、2011年(定本)の輪読を行い、同時にその内容を詳細に検討し、訳文を作成すること、の三点を具体的作業として決定した。 そして、1)および2)に関しては、メンバー相互の日常的な情報・意見交換の場としてSNSを用いたグループチャットを作り、これによって具体的な作業が進行しつつある状況である。具体的に述べると、1)については、映画作品選定をほぼ確定した、といえる状況である。また、2)については、まだ多くの問題があり、今後も文献捜集作業を続けてゆく中で検索対象をどのように考える(つまり絞り込んで整理する)かに関する議論が始まり検討の最中である。 さらに、本研究の中心的課題として挙げられる3)については、読解・検証・検討を開始した。具体的には、輪読の担当と日程を決め、最終的に日本語翻訳書の出版も念頭に置きながらの作業が始まったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の研究の推進方策について、まず次年度以降の推進方針については、上記の1)で述べた「文革映画」研究の対象となる映画作品を次年度中に確定し、ここで確定された個別的な映画作品の内容の重要性を、本研究の理論的枠組に沿ってランク付けることを目指す。さらに余力があれば、ランク付けした映画作品をなんらかの基準によって整理することを目指す。 次に、2)に関しては、「文革映画」研究文献リストの収集対象の範囲を、次年度内に作業遂行可能な範囲にまとめ、1)でランク付けした結果、最重要ランクに入った作品については、それぞれの作品ごとに文献を配置し、今後の作業の便としたい。そして、これを基に最終的な作業用のリストを作っていくことを目指す。 今後の本研究の推進において最も重要かつ骨の折れる作業として、3)の許子東『重読「文革」』の読解、翻訳作業が挙げられるが、これを今後の中心的な課題とする。 次年度は、この本のそれぞれの章の翻訳担当区分に従って、各メンバーが翻訳原稿の作成を進め、ときに応じて成員相互による内容の検討および訳文の検討を行う。そして、年度内に、およそ一書の半分の分量を翻訳することを目標と定める。特に、この本の本文に記されている(文革映画の原作となった)小説の、物語論を用いたテクスト分析に関する検討を重点的かつ徹底的に行い、その分析方法を検証することによって、この本の翻訳作業のみならず、文革関連の文学作品に関する先行研究に対する批判的な検討・理解を推し進め、本研究の理論的な推進力の根拠とすることを目指す。
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Causes of Carryover |
最大の理由は中国への渡航ができなかったことにある。また研究分担者の1人が今年度は物品を必要としなかったため。 使用計画については、研究分担者の1人が使わなかった今年度額については、次年度の研究代表者執行分に組み入れる計画である。
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