2021 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語圏におけるラモー理論の変遷―アントン・ブルックナーを中心として
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21K00111
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
梅林 郁子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10406324)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アントン・ブルックナー / フリードリヒ・エックシュタイン / ジーモン・ゼヒター / エルンスト・シュヴァンツァラ / ラモー理論 / 音楽理論の伝承 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、(1)ラモー理論に関する資料の比較考察、(2)オーストリア国立図書館等における資料調査と内容把握の二点を計画していた。しかし、COVID-19による渡航制限で(2)については実行できなかったため、入手済の資料のみを対象として研究を行った。 研究は、アントン・ブルックナーの弟子であったフリードリッヒ・エックシュタインの著した『アントン・ブルックナー 音楽理論体系』(執筆年不明、オーストリア国立図書館所蔵、目録番号Mus.Hs.29333/1-3)の入手済部分を中心に置き、ブルックナー以前の理論書や、他のブルックナーの弟子の授業記録と比較することで、理論の伝承の道筋や、エックシュタインの理論書の独自性を明確にすることを目的とした。今年度の研究結果としては、大きく以下の2点が挙げられ、学会にて発表を行った。 ①ブルックナー自身は音楽理論書を残していない。しかし、ブルックナーの師ジーモン・ゼヒターの理論書『作曲の原理』(1853, 1854)と、ブルックナーの弟子フリードリッヒ・エックシュタインの理論書や、同じく弟子エルンスト・シュヴァンツァラ著『アントン・ブルックナー ウィーン大学での和声学と対位法講義』(1950)を比較考察すると、ブルックナーの授業が、ゼヒターの理論書から多くを負っていたことが見て取れる。ゼヒターは、ジャン・ル・ロン・ダランベールのラモー理論に強い影響を受けていることから、ウィーンにおいてラモー理論が伝承されていった様子を明らかにできた。 ②エックシュタインの理論書は、様々な音楽作品の実例を豊富に示し、理論が実践に息づいていることを実証している。また、ブルックナーの理論を音楽史の観点からも論じている。これは、他の理論書と大きく異なる点であり、その独自性を明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度に行う予定であった、オーストリア国立図書館での資料調査が実施できなかった。そのため、現地でしか閲覧・筆写できない未出版資料が入手できておらず、この部分の資料研究に着手できていない状況である。しかし「研究実績の概要」で述べたように、今年度は入手済の資料や、令和5年度以降に着手予定だった既出版資料との比較考察を行い、研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、可能であれば、オーストリア国立図書館等に赴き、エックシュタインの理論書を中心に、必要な資料を入手したいと考える。一方で、ダランベールとゼヒターをつなぐ、フリードリヒ・ヴィルヘルム・マルプルクやヨハン・フィリップ・キルンベルガーの著作にあたり、ドイツ語圏におけるラモー理論の伝承について、さらにその内容を精査したい。
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Causes of Carryover |
(理由) COVID-19による渡航制限で、オーストリア国立図書館等での調査が叶わなかったため。 (使用計画) 状況が許せば、オーストリア国立図書館等での資料調査を進める。
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Research Products
(1 results)