2021 Fiscal Year Research-status Report
電子音響音楽における多層的音色構成の思想と伝統器楽由来構造の分析・修復の研究
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21K00112
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
水野 みか子 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (50295622)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子音響音楽 / 音色 / シェフェール / サイモン・エマーソン / 時間軸と音色 / サウンド・プログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
電子音響音楽の根幹をなす「音色・音響の思想」に着目し、Helga de la Motte-Haber hrsg.Klangkunstによる音楽史「音色」記述や、Denis Smalleyによる、聞く人の選択的聴取に基づく音色・音響の多層性の理論、また、Simon Emmersonが指摘する音響が言語的「意味」を持つための文化共有などを調査し、20 世紀後半から現代までの音色論を通史として論じた。その際、サウンドカルチャー一般と聴取の変遷という、より広い文化史的視座の中で電子音響音楽をとらえ、1940-60年代のピエール・シェフェール発案のミュジック・コンクレートが今日的音響思想の源流として西欧音楽の何を受け継ぎ、どのように後代に受容されたか、という観点も取り入れた。 一方、音色追求の実践的試みとして、いくつかの作曲作品を発表した。なかでも、三つの楽章から成る、管弦楽ための<Parva naturalia>では、弦楽器各パートがそれぞれ異なる形でに細動し、絡み合う複数の線の動きで様々な肌触り感を音色感として表現した。短い時間で上下する音高の跳躍でユーモラスな状況を作り、微分音の上に浮遊する空間でソロ楽器が太い線を描くテクスチュアをひとつの音色として措定した。弦のハーモニクス上に消えかかるリズムが擦れるような軋みの和音も、音程を意識させないという点で音色に近づいた。 音声合成プログラム、演奏上演に関するライヴ・インタラクション、通信技術と遠隔コミュニケーション・アプリという三つの面で、新作電子音響音楽の制作を行い、国際コンピュータ音楽会議ICMC、音楽の新インターフェイスNIMEに入選したほか、日本の電子音響音楽教育に関して国際電子音響音楽グループEMSで発表し、また、フランスの音響音楽研究所IRCAMで講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、音楽学、分析理論、音楽情報処理の三つの学問分野にわたって横断的方法で進められている。このうち、音楽学的方法として、1960年代の音響思想と、現代に至るまでのその受容的発展を音色理論と器楽音楽との照合において解釈・整理するという研究はほぼ完結している。第二として、技術変化によって再演不可能となった電子音響音楽作品のソフトウェアプログラムを修復する作業は、研究協力者を得て実践的に進行中である。日本の電子音響音楽作品データベースの作業は、国内外の大学交流の中で、海外の類似研究者と協力体制が確立できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方向性として、まず第一に、日本の電子音響音楽における音色創出の分析を行い、「作曲プロセス」と「上演時の器楽書法との関連」という二面性を明確に記録するアーカイブを拡充する。また、作成したアーカイブを、国際電子音響音楽研究会の関連データベースにリンクする。第二に、シェフェールの音響思想が日本の電子音響音楽の音色思想に与えた影響について、作品分析と理論的言説の両面から検証し、1960年代と2000年代以降との相違を比較する。その際、黛敏郎、丹波明、柴田南雄らによるシェフェール解釈を明らかにした後、2000年以降顕著に活発化した日本の電子音響音楽に関して「作曲プロセス」と「上演時の器楽書法との関連」という二面で分析する。 ライブ・エレクトロニクスの上演形態を持つ音楽作品に関して、技術変化によって再演不可能となったものについて、作曲者の許諾を得た上で、人間による演奏から取得できる音声や動作データのリアルタイム処理を現代のOSと技術環境で再構築し、スコア・フォロウと音声信号処理を修復する。令和4年度には、特に、イアニシ・クセナキスが開発したUPICとその後継ソフトウェアであるIannixやUPISketchに集中し、音響生成を支えるツールと感性が変化したことを踏まえて、今日的なソフトの向かうべき方向に関して、ワークショップの方法でグループ討議する。
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Research Products
(6 results)