2021 Fiscal Year Annual Research Report
Pietro Accoltiの技法書を芸術家の感性という視点から読み解く
Project/Area Number |
21K00116
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Research Institution | Joshibi University of Art and Design |
Principal Investigator |
佐藤 紀子 女子美術大学, 芸術学部, 助教 (10365819)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 芸術と幾何学 / ACCOLTI / ユークリッド / 透視図法 / 絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
Pietro Accoltiの技法書の冒頭より三分の一ほどを翻訳した。翻訳のお陰で、著者の立場と執筆の目的が明かになった。本書は、数学的な証明に裏付けられた正確さとは相入れない考え方で、絵画の仮象空間を構築する技法について解説している。当時、正確な透視図法の技法書も執筆されており、美術の制作者に限られずに様々な分野に従事する人々に読まれていた。本書は、そのような数学的な側面を重んじるのではなく、より簡易的に同様の結果を幾何学により得ようとするものである。よって、この方法は、想像的な情景、とりわけ絵画の仮象空間の制作に有効であると考えられる。 Accoltiの場合は、絵画の基材となるキャンバスの一辺の長さを基準として、仮想の空間を想定している。つまり、描こうとする現実の情景などを用いずに、感覚として絵画の仮象空間に奥行き感を定めようとするものである。このようにキャンバスの一辺の長さを用いる理由を、「画家の好み」と記していることから、当時の画家たちが、正確な透視図法の作図方法よりも、簡易であると感じられる方法で画面に透視図法的な構図を構築して描いた可能性がある。そして、その方法を使うには、ユークリッドの定理を理解していなければならない。ユークリッドの知識は、当時の画家たちが素養として身につけられていた。この簡易な技法を用いれば、数学的に正しい透視図法で描いた結果と似たような構図を得ることができ、透視図法のように作図過程が複雑でなく、そして、作図に画面以上に広い場所を必要としない。よって、既知の知識を援用するだけで理解できたAccoltiの方法を画家たちが用いた可能性があると考えられる。
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