2021 Fiscal Year Research-status Report
The Possibility of Media Archaeology and its related concepts such as Topoi
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21K00129
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
太田 純貴 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90757957)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ユッシ・パリッカ / メディアの地質学 / 田中久重(からくり儀右衛門) / ものづくりとメディア文化 / メディア文化と化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、メディア考古学と相補関係にあるメディアアートの祭典(アルス・エレクトロニカなど)の調査、および現地での研究者との意見交換を軸としていた。しかしながら、コロナウイルスの蔓延や世界情勢の不安定化などを鑑み、海外での調査・知見の交換は次年度以降に対応することに方針を変更した。 その上で、ここ数年間取り組んできたユッシ・パリッカ『メディアの地質学』(Jussi Parikka, Geology of Media, Minnesota Press, 2015)の翻訳に傾注することにした。当該書は、メディア考古学的研究を土台として、新たなメディア文化研究の領域を精力的に開拓し続けているパリッカが、メディア文化と地質学=地球との関係を再考する著作である。計画初年度である2021年に『メディアの地質学』の翻訳に集中的に取り組むことで、ほぼ完了にまで至り出版の準備が相当整ったことは、研究成果として非常に大きい。 メディア考古学者の草分けであるエルキ・フータモがメディア考古学の理論を着想したのは、1990年代のことであった。当該年代のメディア文化関係の資料収集は一定程度進めることができた。資料収集にあたって1980-90年代の文化・社会的動向を調査した派生的な研究成果として、同時代の漫画についての論文を執筆した。 また、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館で開催された、田中久重展の調査ができた。東芝の創始者として語られる田中久重、通称からくり儀右衛門を、からくり文化ーものづくり文化ー企業史の流れで把握しつつ、メディア文化の議論へと多角的に接続するための視点をいくつも得ることができた。 メディア考古学はメディアアートを中心としたアートと強く関わり合っている。鹿児島で活躍する現代アーティストらとトークイベントやワークショップを開催できたのは、今後の研究活動に有益である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍や世界的な政情不安定により国内外の出張・調査が大きく制限されたため、当初予定していたメディア研究者との意見交換やフェスティバルの調査はほぼ全てペンディングを余儀なくされた。 その一方、数年間取り組んできたたユッシ・パリッカ『メディアの地質学』(Jussi Parikka, Geology of Media, Minnesota Press, 2015)の翻訳の完成に目処がついた。また、エルキ・フータモのトポス概念に関わる、同時代のメディア文化論の資料収集が進み、次年度への取り組みの準備は一定程度は整った。 加えて、田中久重の活動をメディア考古学の理論を用いてメディア文化に接続させる可能性が得られた。 以上を踏まえて、派生的な成果は得られてはいるが(3)やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ユッシ・パリッカ『メディアの地質学』(Jussi Parikka, Geology of Media, Minnesota Press, 2015)の翻訳について、最後の調整を行い、出版する。それによって、メディア考古学の理論的発展を辿ることができるようにする。 1980-90年代のメディア研究における反復概念の分析に取り組み、フータモのトポス概念の射程を検討する。
以上の二点を大きな方針として、今後の研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス蔓延のため、国内外の出張が困難になったため。また、スピーカーを招いた研究会等の主催も困難になったため。それに伴い、使用する機材等の購入も後回しになったため。
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