2022 Fiscal Year Research-status Report
The Genealogy on Dance Dramaturgy as Research Methods
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21K00131
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
中島 那奈子 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (00728074)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダンス / ドラマトゥルク / ポストモダンダンス / イヴォンヌ・レイナー / ドラマトゥルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
ダンスに固有の身体領域の理論化に特化したダンスドラマトゥルク・ダンスドラマトゥルギー研究とはいかなるものでありうるのか、また、それはどのような系譜のもとで成立するのか?という問いのもと、本研究は、これまで演劇のドラマトゥルクの仕事の紹介が中心であったこの分野において、ダンスドラマトゥルク ・ダンスドラマトゥルギーの系譜を新たにたどり直す。そして、それをダンスドラマトゥルクとして申請者が行ってきた実践をも交えて言説化することで、ダンスドラマトゥルギーの手法を理論的・歴史的・実践的観点から日本の舞踊学に導入することを本研究の目的とする。ダンスとは何かを探求した欧米舞踊史の二つの潮流であった、ドイツ・ポストドラマ演劇と米国ポストモダンダンスに由来するダンスドラマトゥルク・ダンスドラマトゥルギーの系譜を綿密に辿り直すために、令和三年度は、ポストモダンダンスの関連文献を読解し、ダンスドラマトゥルク、ダンスドラマトゥルギーの系譜という視点から理論的接続を行った。1960年代から80年代のポストモダンダンスが、米国のダンスドラマトゥルクを準備したことを踏まえ、振付家イヴォンヌ・レイナーや批評家ジル・ジョンストンやサリー・ベーンズの著作、国内外の研究文献の読解を行なった。令和四年度は、初年度に延期した米国NY公立図書館での資料調査に加え、コロンビア大学でのダンスアーカイブの講演、イヴォンヌ・レイナーと研究者アンドレ・レペッキへの聞き取り調査を行った。加えて、ダンスドラマトゥルクの研究集成として、ベルギー、オーストラリア、カナダでのダンスドラマトゥルクを対象に、資料読解や実践でのダンスに特化した理論的手法に焦点をあてながら、欧米のダンスドラマトゥルクの系譜をまとめた。加えて、申請者によるダンスドラマトゥルギー単著(英語)出版のため、英国ラウトリッジ社との契約を締結した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ダンスドラマトゥルクの研究集成を目指した本年度では、昨年度コロナ禍で延期していた米国NY出張を実施した。出張では、ポストモダンダンスの振付家イヴォンヌ・レイナー本人に加え、ニューヨーク大学パフォーマンス・スタディズ学科教授でダンスドラマトゥルクのアンドレ・レペッキへの聞き取り調査を行った。加えて、滞在中にはコロンビア大学独文学科主催によるダンスアーカイブを巡る共同講演会に、ガブリエレ・ブラントシュテッター教授と共に登壇し、またニューヨーク市立大学大学院では老いのドラマトゥルギーに関する研究発表を行なった。出張中では、NY公立図書館舞台芸術部門所蔵のポストモダンダンスの映像資料調査も進めた。帰国後は、ダンスが文化政策で促進されたベルギーにおけるダンスドラマトゥルクに焦点をあて、ダンスドラマトゥルギー研究について欧米の系譜をまとめた。オーストラリアの入植者ドラマトゥルクであるレイチェル・スウェイン、振付家シディ・ラルビ・シェルカウイらと協働するベルギーのドラマトゥルク、ギー・クールズによるドラマトゥルギー関連書籍において、ダンスに特化した理論的手法に焦点をあてながら、地域的、性別的、人種的なマイノリティへの配慮が活動にどう影響していたかを、本人への聞き取り調査を加えながら分析した。ドイツの振付家・ドラマトゥルクのライムント・ホーゲが他界したために、欧州出張やインタビューは実現しなかった。その一方で、当初予定していなかったオーストラリアの劇場でのダンスドラマトゥルク・ドラマトゥルギープログラムの企画開催や、カナダの劇場施設バンフセンター・フォー・アーツ・アンド・クリエイティビティのダンスプログラムでの、ファカルティ・ドラマトゥルクとしての実務を通して、当該研究への大きな知見を得た。加えて、ダンスドラマトゥルギー単著(英語)に関する英国ラウトリッジ社との出版契約を締結した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和5年度は、ダンスドラマトゥルク実践の言説化を行う。ここでは、ダンスドラマトゥルクとしてダンスドラマトゥルギーの言説化を試み、令和4年度に英国ラウトリッジ社と出版契約を行なった申請者による単著「老いのダンスドラマトゥルギー」の執筆準備を進める。この本では、これまでの申請者のダンスドラマトゥルクとしての経験を、当該研究で得たダンスドラマトゥルギーの系譜に位置づけ、申請者の立場から執筆する。申請者がドラマトゥルクとして関わった中国のバレエダンサーの老いを扱う作品やアジアの振付家による作品、日独のダンスアーカイブプロジェクトを事例として取り上げ、ダンスドラマトゥルクが作品にどう介入するのかを記述・分析する。昨年度から延期していた欧州出張ではドイツとベルギーのドラマトゥルクへの調査を行い、また初年度に実現できなかった米国LAにあるゲッティー・インスティテュートでのイヴォンヌ・レイナー・コレクションの調査によって、ポストモダンダンスのドラマトゥルギーに関する資料調査を行う。加えて、国内学会および国際学会で研究発表をし、昨年度から継続するカナダの劇場施設バンフセンター・フォー・アーツ・アンド・クリエイティビティのダンスプログラムでファカルティ・ドラマトゥルクとして実務を行い、当該研究へのハンズオンの知識を保つ。これらの調査と並行して、これまで執筆した申請者の関連英語論文を、日本語でまとめなおしていく。ただ、ロシアのウクライナ侵攻による物価高騰と急激な円安によって、国内外の出張への渡航費用が高騰している。そのため、当初予定していた欧州と米国への調査に加え、遠隔地の国内・国際学会発表を行うためには、科研費交付額は十分ではない。科研費以外の研究資金、渡航資金獲得を進めながら、予定していた出張を短縮もしくは中止することも検討している。
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Causes of Carryover |
調査研究で購入した洋書購入費において、円のレートが変化し価格に差異が生じたため、次年度に繰り越した。
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[Presentation] Dance Archive Box2022
Author(s)
Nanako Nakajima, Gabriele Brandstetter
Organizer
Department of Germanic Languages, Deustches Haus, Columbia University
Int'l Joint Research / Invited
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