2021 Fiscal Year Research-status Report
Landscape and the aesthetics of modern melancholy
Project/Area Number |
21K00139
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
仲間 裕子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70268150)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メランコリー / ドイツ・ロマン主義 / カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ / 崇高 / 風景 |
Outline of Annual Research Achievements |
思想や文学・詩から「崇高―メランコリー」の文化的背景を調査する予定であったが、コロナ禍のため、予定していた渡独ができず、研究は計画通りに進展しなかった。一方、近代のメランコリーの基礎となったアルブレヒト・デューラーの銅版画《メレンコリアI(1514年)の資料調査を行うことで近代以前の調査を行うことができた。これまでもエルヴィン・パノフスキーを始めとして 、多くの研究者がその翼をもったメランコリーの擬人像と、彼女を取り巻く数学・天文学の諸道具のような図像の謎解きに挑戦し、今日でも新しい解釈が生まれている。だが、その際、メランコリーは開かれた積極性から考察されている。たとえばハルムート・ベーメは、メランコリー像の鋭い眼差しに着目し、《メレンコリアI》を「反省の版画」 と呼び、反省を経た思考による近代的主体の確立を見た。さらにペーター・シュスターはこの作品を神と世界、人間の威厳、知の偉大さと限界など、1500年当時の人文主義思想のさまざまな観点から考察し、デューラーの思考の総括、すなわち「思考画」 と定義している。そしてメランコリーの擬人像がもはや測量を終え、上方に視線を向けているのは、「己の無知の知によって知の完成に到達したからである」という。ブリギッテ・シュルテによる解釈によれば、デューラーは諸々の対立関係がみられる社会において、人間が危険を担った矛盾した存在であることを、様々な意味をもつ図像を通して明示している。 ところがこの「反省と主体」、「無知の知という徳」、「多様な矛盾を担う存在としての人間」という論点はまた、フリードリヒの芸術観の根底にある。したがってメランコリーの歴史的継承を確認することができた。また、『フーゴ・フォン・チューディ─ドイツ美術のモダニズム』を出版し、フリードリヒが過去から発掘された「ドイツ美術の100年展」(1906)について詳細に記述した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は、ドイツのベルリン、ミュンヘン、ドレスデンの関連機関での調査、またドイツ人研究者と今後の研究について話し合う予定であったが、コロナ禍のため、渡独ができず、計画を実現することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、ハーバード大学の客員研究員として、当大学に1年間研究滞在する。ワイドナー記念図書館、ファインアート図書館、またホートン図書館など、メランコリー、ドイツ・ロマン主義、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒに関連する資料(画像とテキスト)が豊富であるため、徹底した資料調査を行う予定である。またハーバード大学付属美術館(フォッグ美術館)、ボストン美術館、シカゴ美術館、メトロポリタン美術館等でも見学調査と資料調査を実施する予定である。またテーマに関連して、ハーバード大学、およびニューヨーク市立大学の研究者と研究交流を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度がコロナ禍のため、計画していたドイツ(ベルリン、ミュンヘン、ドレスデン)での調査がまったく実施できなかった。次年度は、ハーバード大学で1年間に渡る調査を行うため、その外国旅費、滞在費、資料費などに使用する予定である。
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