2023 Fiscal Year Annual Research Report
Research and study of the Gobu-Shinkan -collection of Onjo-ji- by optical method
Project/Area Number |
21K00145
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安嶋 紀昭 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (40175865)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 美術 / 台密 / 園城寺 / 五部心観 / 図像 / 密教 / 三井寺 / 光画像計測法 |
Outline of Annual Research Achievements |
園城寺の国宝五部心観は、秘仏であるが故にこれまで詳細な調査は不可能であったが、本研究において光画像計測法をも応用した実査が叶い、主に以下のような成果を得た。 服装の相違による男女尊の分別や尊像の向きに従った曼荼羅上の配位などに照らせば、その内容は基本となる中央の「第一金剛界大曼荼羅37尊(仏部)」に始まり、向かって左の金剛界如来夫妻を女性尊のみが囲む「第二仏妃曼荼羅34尊(宝部)」、第二世代の菩薩形のみで五相成身を示す「第三仏子曼荼羅33尊(金剛部)」、不空成就仏をやはり女性尊だけで取り巻く「第四不空成就曼荼羅33尊(羯磨部)」、阿弥陀を中尊とする「第五阿弥陀曼荼羅5尊(蓮華部)」の五輪を、左回りに廻らす円形・俯瞰型の五部倶会曼荼羅となることが判明した。 また、完本の表現・技法を顕微鏡をも用いながら具に観察した結果、前半(第二曼荼羅まで)と後半で4人ずつ2組、計8人の画師に分別できることがわかった。各々の構成はA・A’が主任格、B・B’が年長のベテラン、C・C’が若手、D・D’がある程度の腕を持った中堅という具合に両組とも同じような特徴を持ち、しかも彼らの実力は全員が一定レベル以上にある。完本の制作は宮廷画師集団による可能性が高い。 一方、前欠本の画師は4人に分類できる。うちαは完本の線質をも写し得る実力を備えた主任格と見做され、βとθはその努力を払うものの描線が一定しない。そしてαの線質は、模写であることを勘案しても応徳三年(1086)「応徳涅槃図」ほど柔軟でも力強くもなく、大治二年(1127)東寺旧蔵十二天画像まで謹直かつ硬質ではない。ただ、第四曼荼羅金剛鉤だけは線質が粘り強く、収筆まで同じペースを保つ一方で、一度引いた線に二度、三度と筆を添えて形を調えることに全く躊躇しない。この線質と癖とが、高山寺の鳥獣戯画甲巻を彷彿とさせる点は極めて興味深い。
|