2022 Fiscal Year Research-status Report
18世紀フランスの王妃をめぐる表象研究―マリー・レクザンスカとアントワネット
Project/Area Number |
21K00167
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
小林 亜起子 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (00618275)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マリー・アントワネット / ヴェルサイユ宮殿 / 王妃の間 / 肖像画 / 室内装飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、18世紀ブルボン朝の王妃マリー・レクザンスカとマリー・アントワネットの表象について、美術史の視点から解明していくことを目的としている。 2022年度は、王妃のイメージ研究を進める上での資料、図版の収集とともに、フランスにて現地調査を実施した。当該出張は夏期に実施することを予定していたが、欧州のコロナ感染状況を考慮し、2023年に入ってから遂行された。現地では日本で入手できなかった一次史料を精査し、ヴェルサイユ宮殿の内部装飾・美術工芸作品について詳細な観察を行った。ヴェルサイユ宮殿では、18世紀の国王ルイ15世をテーマとする大規模な展覧会が開催されていた。本展の見学により、ルイ15世と王妃マリー・レクザンスカの時代の芸術に関する最新研究を把握することができた。そこで得られた知見は、本研究計画を遂行する上で大変有益なものであった。また現地調査を通じ、これまで十分に検討がなされることのなかった、数点の王妃マリー・アントワネットの肖像に関する情報を新たに入手した。これらの作品は本研究テーマとも密接に連動しているため、次年度も継続して調査研究が進めることとなった。 一連の研究成果の一部は、内閣府迎賓館赤坂離宮で企画された、迎賓館の天井画並びに「花鳥の間」の室内装飾に関する口頭による解説会において、有意義に生かされた。また本年度は、2023年から国立新美術館で開催されている「ルーヴル展―愛を語る」の展覧会カタログの翻訳を担当した。そこでは、18世紀フランス美術に関するギヨーム・ファルー氏(ルーヴル美術館 絵画部門 主任学芸員)による論考及び、国王の首席画家フランソワ・ブーシェの作品解説の翻訳を担当した。この取り組みは、本研究対象である二人の王妃が生きた時代の美術に関する学術研究と作品について、日本での理解を深める上でも意義深いものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる考察対象である18世紀の王妃に関する絵画・室内装飾についての資料収集はおおむね予定通りに実施されている。本年度は、王妃にイメージ研究の一環として調査研究を進めているフランスの宮殿装飾について、それが重要な着想限となった迎賓館赤坂離宮の室内装飾に関する解説会を行なった。そのエッセンスをまとめた論考は、内閣府迎賓館赤坂離宮のHP上で公開されている。また、18世紀フランス美術を理解する上での重要なルーヴル美術館の作品が取り上げられた展覧会のカタログ制作に関わり、同カタログ所収の論考と作品解説の翻訳を担当した。 今年度調査・調査を実施するなかで、2023年に入ってからフランスで実施した現地調査において、これまで看過されてきた数点のマリー・アントワネットの肖像についてさらなる研究の必要性があることが確認された。これらの作品群については、本研究計画を検討した際に把握できていなかったものであるが、王妃のイメージ研究を進める上できわめて重要である。今年度は一連の作品に関する資料収集、一次資料の調査は十分に行えなかったため、次年度に一連の作業を継続していくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も引き続き王妃の表象に関する調査・研究方法を実践していく。ただし研究の対象作品については、若干の変更を予定している。2023年度は当初計画では、王妃に関わりが深いヴェルサイユ宮殿や離宮の建築装飾に関する研究を視野に入れていたが、2022年度の現地調査によって、これまでほとんど見過ごされてきた一連の王妃の肖像画があることが明らかとなったためである。王妃のイメージ研究をテーマとする本研究計画の特質を考慮し、2023年度は、これらの作品群の調査研究を優先的に進めることとする。これらの肖像の研究を進める過程では、ヴェルサイユ宮殿の「王妃の間」の室内装飾についても考察することが必要となる。したがって、王妃の肖像画に焦点を絞って考察していくとしても、2023年度の当初の計画である、王妃に関わる建築装飾についての考察も同時に行っていくという方針に変わりはない。なお、2023年度の主たる考察対象となる王妃の肖像画については、新たな知見を有するフランス語による論文としてその研究成果を公刊することを目指す。
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