2021 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive Study on Visual Images Produced in the Kasuga Belief Concerning Their Iconography and Function
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21K00169
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
白原 由起子 国際基督教大学, 教養学部, 客員教授 (10757537)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 春日信仰 / 垂迹画 / 神仏習合 / 春日曼荼羅 / 仏教絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究は、礼拝画を中心とする絵画を考察することにより、奈良・春日大社に成立し各地に伝播した「春日信仰」の実態の解明を進めることを目的としている。とりわけ、現存遺例に恵まれた春日信仰の絵画に描かれた図様を読み解くことは、いわゆる「垂迹画」とばれる神仏習合により制作された仏教絵画を、絵画史の観点からだけでなく、古代~中世期における日本の信仰の様態やその諸相、展開を明らかにすることになる。 とはいえ、このジャンルにおいては、未だ考察の俎上にのぼらない絵画や、既知ながら未解明というべき垂迹画が少なからずある。この状況下にあり、初年度の令和3年度は、大きく分けて2つの方向に研究を進めた。 ひとつは、春日信仰絵画の研究の基礎をなす、春日信仰の確立期ならびに絵画制作の初段階であり、特に宮曼荼羅において典型的図像を確立した鎌倉時代後半期における春日宮曼荼羅に関する諸問題の整理である。作品データ、および春日や大和(奈良)におけるこの時期の春日信仰、また春日社をめぐる歴史や政治の動向を示唆する資料の収集に努めた。 もうひとつは、春日信仰の中世期の作例ながらこれまで研究されることのなかった春日信仰と伏見稲荷信仰の習合、すなわち神と仏だけれはなく、神と神の習合という特異な信仰にに関する研究である。この特異な習合関係に基づくとおぼしき現存絵画の意味を解読し、その象徴性を理解することは、古代に確立した春日信仰と近世における春日信仰を繋ぐ中世的様相の一環を明らかにするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄に述べた令和3年度における研究のふたつの方向性のうち、特に後者である、春日信仰と伏見稲荷信仰の習合に基づく絵画に関する研究に、記述すべき研究の進展がある。 関西に現存する特異な図様をもつ絵画4件の調査を実施するとともに、これら絵画に関する史料を収集した。さらに絵画が伝存する地域における歴史や伝承の調査、実際に現地を踏査することにより、春日信仰の進展の一様態である、伏見稲荷信仰との特異な習合の絵画的表現の考察を進めた。 本研究の成果は、目下、論文発表に向け、執筆段階にあり、本課題の研究の進捗はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題に基づく絵画信仰の絵画の調査、関連する資料の収集・考察を引き続き行う。それによるデータの集積、作品間に共通あるいは相違する図様を考え、その特徴から推察される作品の意味を検証し、特異な絵画あるいはグループから考察される信仰背景や受容者などの問題を解明することを目指す。 具体的には、春日信仰が確立した奈良・春日社(現春日大社)および興福寺を中心に、大和(奈良)一円に調査範囲を広げ、当該地域に現存する絵画や資料を収集し、分析、考察を行うことになる。作品や史料、伝承に関する情報の収集も重要となるため、春日大社および所蔵機関および所蔵者個人、地方史研究者などの協力を仰ぐ場合がある。こうした“目の鍛錬”を継続することで、既知の作品に新たな発見を見出すこともある。また、これまで幾度となく経験してきたように、未紹介の、いわゆる新出の作品に出会える機会もあると考えている。 特に今後は、令和3年度に調査した現存絵画から推察される、春日信仰と律宗西大寺の関係性の問題、また春日宮曼荼羅の図様におけるふたつの「塔」のモチーフの表現の問題を考察する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、コロナ禍の影響もあり、国内出張による調査の機会が予定よりも少なくなった。次年度の研究費は、奈良・春日大社および興福寺をはじめとする大和(奈良)一円での調査のための国内出張費、書籍の購入および複写に充当する予定である。
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Remarks |
「春日信仰の絵画-研究の現状と展望-」(仮題)を、第795回浅草寺仏教文化講座(令和4年7月)にて口頭発表する。
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Research Products
(1 results)