2021 Fiscal Year Research-status Report
日本と台湾における都市からみる「故郷」の表象とその比較-1930年代を中心に
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21K00170
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
児島 薫 実践女子大学, 文学部, 教授 (40195714)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 台湾美術展覧会 / 結城素明 / 常岡文亀 / 山口蓬春 / 陳進 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルスの感染拡大のため、台湾に渡航することができず、その代わりに国内で作品調査を進めた。また予定していた研究論文の発行が遅れているため、本研究に関する論文は公開できなかったが、2022年度中に出版予定である。その他以下の実績をあげた。 ①東京藝術大学美術館で結城素明、常岡文亀の作品を調査。結城素明は台湾からの留学生を指導した日本画家。常岡は素明のもとで東京美術学校で助教授として指導にあたった。これまで注目されてこなかったが、実見することで胡粉を盛り上げる新しい技法を知ることができた。②塩月桃甫に関するドキュメンタリー映画上映会に参加。またこの映画上映を主催したみぞえ画廊で開かれた「塩月桃甫展」にて新発見の塩月作品を調査。③女子美術大学美術館で開催された「柿内青葉展」にて柿内作品を調査。女子美術学校で後輩となる台湾の女性画家陳進と作風を比較することができた。④山口蓬春記念館にて蓬春が台湾で制作した素描類を調査。山口蓬春は1、2,4回府展審査員として訪台している。蓬春記念館では一昨年に蓬春が台湾から家族に送った書簡、絵はがきを調査した。今年度の調査では素描類を実見することで、蓬春が台湾の人物や風景に注いだまなざしについて考える材料を得た。⑤3月26日にオンラインで意見交換会を開催。研究協力者2名に加え台湾、国内から各2名の研究者の参加を得て、①から④の調査について報告をおこなった。 その他、日本による台湾統治時代の文献および絵葉書等の資料収集、台湾文化研究に関する文献収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大のために台湾での調査がかなわなかった。また大学で別予算で2021年度購入してもらうことになっていた「台湾日日新報」のデータベースが年度末ぎりぎりになって配置されたため年度中に使うことができなかった。2020年3月に国立台湾美術館が開催したシンポジウムでオンラインにておこなった口頭発表の内容を論文として提出したが、出版が遅れている。2022年3月に出版社が決定したという連絡が届き、出版契約書に署名をおこなったので今後出版される予定である。国内の移動にも制限がある時期が長く続いた。 以上のことから当初計画した予定よりはやや遅れている。しかしながら調査の対象を変更し、まずは概要で述べたように近隣の美術館で関連作家の作品調査をおこない、資料収集を継続した。2021年度には台湾で非常に興味深い展覧会があったにも関わらず行くことができなかったが、研究協力者により図録を入手することができた。 作品調査をおこなった結城素明は6、7、10回台湾美術展覧会審査員として訪台している。また川端美術学校で台湾からの留学生を教えており、台湾美術家との関わりが深い。常岡文亀は結城素明のもとで1939年第3回新文展で審査委員を務め、素明のもとで東京美術学校日本画科助教授であった。これまで全く注目されてこなかったが、台湾からの留学生が学んだ時期に帝展で一定の影響力を持っていた画家である。調査によりその画風に関する手がかりを得た。また女性画家である柿内青葉は台湾女性画家陳進との関連が考えられ、両者は直接会うことは無かったかもしれないが、柿内は清方の弟子として女性の門人の指導にあたっていたことから調査をおこない、共通点を見いだした。 このように研究課題に関する調査を進め、考察を深めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大がいつまで継続するかが不明であり、また展覧会のスケジュールが各地で変更を余儀なくされている現状から、台湾での調査は2023年度におこなう予定とする。ただし重要な展覧会が開かれるのであれば、臨機応変に考える。2022年度はまだ状況が不明であるため、台湾人画家と関わりを持っていた日本人画家たちに関する調査を優先する。 2021年度より台湾女性画家陳進との関連が考えられる女性画家である柿内青葉、朝倉摂の作品との関連を調査する。柿内と陳進は直接会うことは無かったかもしれないが、柿内は清方の弟子として女性の門人の指導にあたっていたことから、関連を探る。また朝倉摂はおそらく陳進と会っていたとみられる。 また常岡文亀、山口蓬春のように、東京美術学校出身、帝展出品の画家たちの1930年代から40年代の作品についても引き続き調査し、台湾の画家たちと比較をおこなう。 また本研究の以前より藤島武二に関する調査研究を継続しており、今後も藤島と台湾、東アジアとの関わりについて、引き続きスケッチブックなどの資料から読み解き、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染が続いたため、台湾での調査を行うことができなかった。国内での移動も制限があり、旅費をほとんど使用しなかったことから変更が生じた。これは繰り越して今後の調査に活用する予定である。
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Research Products
(1 results)