2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00172
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
伊藤 博明 専修大学, 文学部, 教授 (70184679)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | シビュラ / バルディーニ / クリスピン・デ・パセ / フェオ・ベルカーリ / トマス・トレヴィアン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世後期からルネサンスにかけて、イベリア半島において出現したシビュラ像について、そして、これらのシビュラ像とヨーロッパで制作された版画集から影響を受けて成立した、16~17世紀のラテンアメリカの諸国家の聖堂などに見いだされるシビュラ像について調査・研究し、バロック期におけるシビュラ像の世界的な受容と展開について総合的に明らかにすることを目的としている。 2021年度はこの探究の予備的作業として、イタリアとフランスにおけるシビュラ図像を再調査するともに資料を収集し、また著名なシビュラ図像集について分析を行う予定であった。しかし、コロナ禍によってヨーロッパへの渡航が不可能になったために、もっぱら後者について考究したが、主な研究実績としては以下の二点がある。 (1) バッチョ・バルディーニによる12人のシビュラ像。1470年初頭にフェレンツェで制作されたバルディーニによる12人のシビュラ像を描いた銅版画は、15世紀初頭にローマのパラッツォ・オルシーニに描かれた12人のシビュラに多くを依存しながらも、1460年代にフィレンツェで制作された『図解年代記』の影響を受けている。また1471年にフィレンツェのピアッツァ聖堂で上演された、フェオ・ベルカーリ作の聖史劇との平行箇所が見いだされる。 (2) クリスピン・デ・パセのシビュラ図像集の展開。クリスピン・デ・パセが1601年にユトレヒトで刊行した『12人のシビュラのきわめて豊かな図像集』は、三種類の英語版が1601年から1612年にかけてパリで刊行された。そのイギリスにおける受容は、トマス・トレヴィアンの彩色挿絵入りの『雑録』に見られ、また、いくつかの邸館の中で描かれて、イギリスのマテリアル・カルチャーに影響を及ぼした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による渡航中止により、イタリアとフランスでの現地調査を実施することができず、したがって、具体的な美術作品における図像分析を十分に行うことができず、もっぱらシビュラ図像集の研究に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパへの渡航が可能となった場合は、すみやかに、イタリア・フランス・スペイン・ポルトガルでの調査を行う。他方、依然として海外調査が不可能な場合には、あらたに資料を蒐集して、文献上における考究を続ける。
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