2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00178
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
喜多 恵美子 大谷大学, 国際学部, 教授 (30410971)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植民地 / 在朝鮮日本人 / 近代美術 / 日朝交流 / 朝鮮美術展覧会 / 加藤松林人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先行研究できちんと扱われてこなかった日本人と朝鮮人の美術界における交流について、当時の関係者が残した記録を掘り起こすことなどで明らかにしていき、ひいては植民地下の朝鮮美術界の重層的な様相を浮き彫りにしていくことを目的としている。 当初の計画では日本のみならず、朝鮮半島に残されている記録についても統合していく予定であったが、海外渡航が困難な状況において、国内での資料収集、論文執筆、学会活動参加を主に行うこととなった。 具体的には、在朝鮮日本人画家加藤松林人の遺稿のタイプおこしにはじまり、その読み込みと分析が中心となったが、研究の成果を2022年1月に文化庁現代アートワークショップ・セッション5「東アジアにおける官設展覧会と日本」において「朝鮮美術展覧会研究によせて」というタイトルのもと発表することができた。この発表においては、朝鮮美術展覧会の参与でもあった加藤松林人の遺稿を通じて新たに得られた事実を反映させ、武断統治期における日朝高官間の書画を通じての交流や『京城日報』美術記者の役割、日本で美術教育を受けた朝鮮人知識人における美術制度の内面化など、「総督府による美術統治」という既存の平坦な解釈では説明のつかない複雑な朝鮮画壇の様相を浮き彫りにした。加藤松林人の遺稿については、『回想の半島画壇』『半島画趣』を紹介する「在朝鮮日本人画家の遺稿に見る朝鮮画壇―加藤松林人を中心に―」(『大谷大学真宗総合研究所研究紀要』第39号)を発表した。中でも、朝鮮の書画と日本の絵画との異質性について、当時の画家たちがどのように捉えていたのかを明らかにした。加藤の論考は分量内容ともに豊富であるため、今後もさまざまな角度からの分析や考察が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響で、国外はもとより国内の調査についても実施が困難な状況であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は国内の調査を徐々に再開し、新資料の発掘に力を入れる。2021年度までに入手した資料についての整理分析についても集中的に執り行う。同様の問題意識をもつ研究者と連携し、研究会を開催するなど情報の共有と研究の発展につとめる。研究成果の発表については国内にとどまらず、国外(とりわけ韓国)においても積極的に行い、意見交換や助言を得られるように努力する。
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Causes of Carryover |
新型感染症流行のため、予定していた調査を実行できなかったため次年度使用額が生じた。2022年度は加藤松林人の出身地である徳島県阿南市や、朝鮮の文人たちの書画が所蔵されている佐倉市郷土博物館などの国内調査を順次進めていく。また、韓国への渡航が可能になれば、海外調査も視野に入れている。
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Research Products
(2 results)