2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00178
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
喜多 恵美子 大谷大学, 国際学部, 教授 (30410971)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 朝鮮近代美術 / 植民地美術 / 在朝鮮日本人 / 加藤松林人 / 書画 / 日朝交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植民地期の朝鮮の美術界における日本人と朝鮮人の交流様相について、当事者たちが残した記録を掘り起こすことにより当時の朝鮮画壇の重層性を浮き彫りにしていくことを目的としている。 関東大震災百周年にあたる2023年度は、前年に独立記念館で行った報告が論文として出版されたが、その論文がきっかけとなって韓国の全南大学5.18研究所他が主催するシンポジウムに招請されることとなった。今回は関東大震災にまつわる作品を描いたほぼ唯一の朝鮮人画家李象範に焦点をあてた論考をソウルで発表した。 また、2019年来の懸案であった阿南市所蔵の加藤松林人作品の悉皆調査を行うことができた。所蔵点数が360点と膨大であるため、今回はチームを編成して調査に臨んだ。メンバーには、大阪大学大学院のバン・ミナ氏、在朝鮮日本人画家研究において実績のある横浜美術館の日比野民蓉氏、調査補助として大阪大学大学院生のミン・ロサ氏に参加してもらった。調査の成果は調査チームで共有すると同時に阿南市にもフィードバックし、作品の保全と活用につなげられるようにしたい。 年度末には研究成果の共有と関係領域の研究者間の交流の場を提供する目的で「日韓間美術交流をめぐる諸問題」と題した研究会を行った。カン・ミンギ氏(忠北大学校)を韓国より招聘して基調講演を賜り、個別報告者としては研究代表者の他に松岡とも子氏(国立民族学博物館)とバン・ミナ氏に登壇していただいた。国内外から美術史や朝鮮史研究者が参加し、活発な議論が交わされた。この研究会と時期を同じくして、開化派の金玉均と徐光範が日本滞在中に揮毫した書画作品を所蔵者の依頼により調査することとなり、カン・ミンギ氏ならびに日比野民蓉氏に協力を仰いで共に作品を実見した。結果、作品の制作目的や時代背景、意義などについて少なからぬことが解明され、今後の研究活動においても示唆するところが大きかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの流行により生じた初年度の遅れが影響し、国外での調査が完全実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナや戦争などによって影響をうけた国外での調査については、国内での資料収集やインタビューに重点を置き換え、インターネット上で公開されている国外機関の資料閲覧にも注力していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国外調査が実施できなかったことで、調査研究に全体的な遅延がおきた。制限のあるなかでもより充実した成果をあげるために本プロジェクトを延長することにした。これまでの調査結果をもとにさらなる資料調査やインタビューを行い、研究成果公開のためのシンポジウム開催を計画している。
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