2021 Fiscal Year Research-status Report
イスラームの図像文化における世俗性の表現をめぐる実証的研究
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21K00180
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
林 則仁 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (20738215)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イスラーム写本絵画 / ウージュ / 巨人 / 世俗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該課題の一年目である2021年度は、当初の計画どおりにイスラーム世界の写本絵画に表される世俗性について図像の分析を行った。これまでに研究代表者が収集した資料をもとに、特定の図像を取り上げて議論することを試みた。 2021年度は特に、イスラームの文学作品において表象される巨人ウージュが宗教書や文学作品、博物誌など幅広いジャンルで挿絵として視覚化されていることに着目した。ウージュはユダヤの伝承にある巨人オグに由来すると考えられているが、イスラームではアダムの孫とされており、粗野で巨大な身体を持つ者として語られる。伝承では、その身体的優位性から神の力を軽視してついに預言者モーセに退治されるのであるが、絵画化される際にはモーセとウージュの闘いの場面が好んで描かれる。ここでは、聖性の象徴としてのモーセとその対極にいる粗野な巨人ウージュという構図が取られ、ウージュの世俗性が図像表現において顕著となっている。その姿は身なりの整った高貴なイメージのモーセとは対照的に半裸に腰布を纏い、髭や頭髪は手入れのされていない状態で描かれており、不信心で文明を持たない者の姿を典型化させたものと理解できる。 ウージュのこのような図像はいかに形成されたのかについて、ウージュを絵画化したものとして現存最古の13世紀の挿絵から16世紀までのウージュの肖像をくまなく分析し、その図像形成の過程をみながらイスラーム写本絵画における世俗表現について詳細な考察を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画どおり順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究も当初の計画どおりに遂行できる見込みである。
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Causes of Carryover |
2021年度に計画していた国外での写本調査がCOVID19の影響で全て延期となったことによる使用計画に変更。次年度に今年度予定していた国外での写本調査を実施する予定であるため、次年度使用額が生じている。
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