2022 Fiscal Year Research-status Report
メディア・アートにおける「動き」と「インタラクション」-実践的芸術理論の構築
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21K00191
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
児玉 幸子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10323883)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メディアアート / インタラクティヴアート / 芸術理論 / インタラクションデザイン / ヒューマンコンピュータインタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタルメディアを用いるキネティックアートの動きを「偶然による動き」「繰り返す動き」「創発による動き」「AI(Artificial Intelligence)による動き」の4種類に分類し、それぞれ作品の制作と、時間軸上の造形変化と鑑賞者の芸術体験の関係を考察する研究を行った。キネティックライトアートの「格子窓シリーズ」に関する論文を日本デザイン学研究作品集に投稿し、採択された。「格子窓シリーズ」は、格子の裏側に取り付けたフルカラーLEDを奥行き方向に照射して、LEDからの反射光の色と輝度を制御するキネティックライトアートである。乱数を用いて色の遷移を決定する「偶然による動き」と、幾何学的パターンやシンボルの「繰り返す動き」のルールを、光を変化させる原理として用いている。 液体ならではの偶然性と、プログラムによる繰り返し、重力と磁力と表面張力のバランスによって創発する磁性流体の動きは、磁性流体アートプロジェクトの作品《突き出す、流れる》の造形原理となっている。令和三年に《突き出す、流れる》の装置を利用して制作した映像作品《重力の庭》を、磁性流体の動きと映像中の視点の移動を考慮して再編集し発表した。本作品について令和三年に昨年度羽倉賞優秀賞を受賞し、令和四年には最先端表現技術利用推進協会、セルビアのヴォイヴォディナ現代アート美術館で講演を行った。(東京読売新聞の夕刊に「重力に逆らう彫刻」として写真付きで作品を紹介頂いた。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キネティックアートにおいては、作品自体が変化し、動くことに加えて、鑑賞者自身の視線と身体の動きが芸術体験をかたち作っている。物理的なインタラクションが無くとも、作品自体の動きと鑑賞者の動きが連動することによって、作品のイメージと鑑賞者の間にポジティヴな相互作用が生ずると考えられる。このような相互作用について考察するために、国内の複数の展覧会を訪れて実際に作品を体験し、アーティストの一次資料の調査と考察を進めた。平行して、鑑賞者の働きかけで作品自体が変化するインタラクティヴアートについて、その芸術体験を分析した研究論文など文献の調査と、インタラクティヴアートの展覧会で過去に実施したアンケートの結果の分析・考察を行った。 キネティックライトアートの「格子窓シリーズ」に関する論文が日本デザイン学研究作品集28号に採択された。現在、インタラクティヴアートを直感的かつ容易に制作するためのモーションセンサーシステムの改良を進めて、システムで取得したデータを機械学習して用いるソフトウエアの開発を行っている。これらは令和五年度内に作品に応用することを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究では、メディアアートにおいて、動く造形作品であるキネティックアートの「動き」とインタラクティヴアートの「インタラクション」に焦点をあて、これらの芸術の原理と特色を明らかにしていく。ニューメディア特有の「動き」と「インタラクション」のデザイン方法によって、作品が人々を直接的に結びつけ、異なる分野を横断的に結び付けるという仮説を立て、これまでに作られた作品を調査分析することで得られた原理を新たに作る作品の構想に役立てる。実際にメディアアートを制作し、展覧会での鑑賞実験による評価を行い、作品における人々の相互作用によって社会において価値を創出する芸術の新たな役割を創造する芸術学の構築を行うことを目的としている。 令和五年度は、これまでの分析と考察をもとに新しい作品を設計し、夏につくば市で開催されるメディアアートの展覧会において、アーティストと科学者が協力して作品を制作するサイエンスハッカソンのプロジェクトとしてインタラクティヴアートを制作し発表する予定である。この展覧会ではワークショップも行われ、本研究で開発したセンサーシステムを用いて児童向けにワークショップを開催する。これらの展示とワークショップでは、鑑賞実験、アンケート調査も実施する。 研究成果は、メディアアートに関する国際会議で発表し、実践と理論の両側面でのメディアアートの芸術理論に関する論文、書籍として出版する予定である。
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Research Products
(3 results)