2021 Fiscal Year Research-status Report
西洋声楽受容期におけるイタリア系声楽家の活動について
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21K00238
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
直江 学美 金沢星稜大学, 人間科学部, 教授 (90468976)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 西洋音楽受容 / アドルフォ・サルコリ / ベル・カント / イタリアオペラ / 西洋声楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,コロナ禍で思ったほど資料調査ができず,代わりにオンラインでの調査およびこれまでに収集した資料の翻訳をおこなった。その調査過程で,アドルフォ・サルコリ(1867-1936)は,1911(明治44)年の来日当時には多くのオペラのレパートリーを持っていることがわかった。 明らかになったサルコリのレパートリーは《アイーダ》のラダメス,《フェードーラ》のロリス,《トスカ》のカヴァラドッシ,《マノン・レスコー》のデ・グリュー,《パリアッチ》のカニオ,《仮面舞踏会》のリッカルド,《椿姫》のアルフレード,《カヴァレリア・ルスティカーナ》トゥリッドゥであり,いずれも主役,もしくは主役級であった。サルコリのレパートリーに関するこれまでの調査では,サルコリが日本でおこなった演奏活動から〈星は光りぬ〉などいくつかのテノールのアリアがレパートリーであることは分かっていた。また,本人の口からそれなりのレパートリーを持っていたことも伝わっていた。しかし,オペラのレパートリーとなると,例えばサルコリは来日直後の1911年12月15日より東京の帝国劇場で《カヴァレリア・ルスティカーナ》のトゥリッドゥを三浦環(1884-1946)と演じたことがわかっているが,内容を調べていくと,上演されたのは,人々が教会に入って行くシーンからサントゥッツアとトゥリッドゥの二重唱までであった。また,母親役がいないことから母親のシーンもカットした短い上演であった。このように,当時の日本ではオペラを全幕上演する機会はほぼないことから,これまでサルコリのオペラのレパートリーを特定することはできてはいなかった。本研究はあと2年あるので,今回明らかになったサルコリのイタリアオペラのレパートリーを元に,引き続きサルコリおよび弟子たちが,日本の西洋声楽受容過程にどのような影響を与えたのかについて明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため予定通りの調査がおこなえず,代わりにオンラインでの調査やこれまでの資料の精査をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度上半期は,2021年度に行えなかった,サルコリが死去した1936年以降の弟子たちの音楽活動を調査したい。2022年度後期及び2023年度には,来日以前にサルコリが音楽活動を行ったシチリア(ノート:1899年,チアレアーレ:1899年,カルタニゼッタ:1900年,カターニア:1908年,トラパーニ:1909年,シラクーサ:1908年),ナポリ:1899年,サレルノ(1899年),ノヴァーラ,フィレンツェ,ミラノでの調査を行い,サルコリのイタリアでの音楽活動について現地調査をおこなう。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,予定通りの出張が出来なかったため次年度使用額が生じた。ついては,2021年度に行う予定であった調査を2022年度上半期におこない,旅費等を支出する予定である。
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