2022 Fiscal Year Research-status Report
西洋声楽受容期におけるイタリア系声楽家の活動について
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21K00238
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
直江 学美 金沢星稜大学, 人間科学部, 教授 (90468976)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 西洋音楽受容史 / ベル・カント / イタリアオペラ / アドルフォ・サルコリ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,サルコリのデビュー関連記事,および,1933年に結成したシエナ会が開いた演奏会のプログラムを調査した。 サルコリのデビュー関連記事は,サルコリがデビューした1897年末から1898年にかけてシエナで発行された新聞記事を対象とした。新聞にはサルコリに言及するオペラの批評が複数回掲載されており,「我らがシエナ市民であるテノールのサルコリ」は,大成功をもってデビューを果たし,オペラ歌手としての将来を期待されていたことを示した。また,サルコリは,オペラのシーズンを通してイタリアオペラの難しい役を歌いきるだけの技量を持ち合わせたテノール歌手であったことを明らかにした。 シエナ会については,シエナ会の演奏会プログラムを入手し調査した。シエナ会は,サルコリ存命中に「シエナ会大演奏会」(1933),「謝恩大演奏会」(1933),「第二回シエナ会声楽大演奏会」(1934),「第三回シエナ会声楽大演奏会」(1935)の4回の演奏会を,サルコリ死去後は,「故ア・サルコリー先生謝恩大演奏會」(1936),「サルコリー先生17年追悼音樂會」(1952),「ア・サルコリー先生25周年追悼音楽会」(1962)の3回の演奏会を開催した。プログラムには,プッチーニ,ヴェルディ,マスカーニ,レオンカヴァッロなど,イタリア人作曲家が作曲したイタリアオペラのアリアが並び,「謝恩大音楽会」では,出演者の声種を,ソプラノレヂエロ,ソプラノリリコとの表記があった。 サルコリは弟子たちの声を,ソプラノやアルトではなく,レッジェーロやリリコなど,より細かく見極め,声にふさわしい曲を与えていた。ドイツ系が中心であった当時の日本で,イタリアオペラが並ぶプログラムは珍しく,レッジェーロやリリコまで記載していることも稀である。これらの,西洋声楽受容期におけるサルコリおよびイタリア系声楽家の活動の一旦を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は国内調査はおおむね順調であったが,海外調査がおこなえなかった。その分「やや遅れている」とする。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度後期には,来日以前にサルコリが音楽活動を行ったシチリア,ナポリ,サレルノ,ノヴァーラ,フィレンツェ,ミラノでの現地調査を行い,サルコリのイタリアでの音楽活動についてまとめたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によりイタリアでの調査ができず,その分次年度使用額が生じた。2023年度はイタリアでの調査をおこないたい。
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