2022 Fiscal Year Research-status Report
小津安二郎直筆資料群の比較検討:蓼科日記、1930-60年代日誌との比較から
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21K00239
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
宮本 明子 同志社女子大学, 表象文化学部, 准教授 (60633419)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 台本 / 日記 / 小津安二郎 / 野田高梧 / 映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に次の2つの資料を対象として、同時期の小津安二郎監督および関係者の行動、制作背景を確認した。(1)『早春』修正入台本(1956年)(2)『麥秋』台本(1951年)である。 (1)、(2)それぞれについて、蓼科でのシナリオ執筆の際に記された蓼科日記、小津と脚本を執筆していた野田高梧の日誌、小津安二郎の日誌と比較し検討した。 以上の成果として、(1)では、『早春』台本に修正を入れたとみられる作家里見弴の足跡を具体的にたどることができた。里見が映画雑誌『シナリオ』に台本への関与を明言していたこと、さらに、里見が日本映画の台詞をどのようにとらえていたのかを突き止められた。(2)では、高等学校国語教科書に『麥秋』のシナリオが一部掲載された経緯について調査を進められた(一部現在も調査中である)。 これらの成果を学術論文やポスター発表・口頭発表として報告するだけでなく、一般への報告にも努めた。具体的には、プロデューサーとして小津組を支えた山内静夫を追悼する企画展「追悼・山内静夫 松竹大船撮影所物語」(於:鎌倉市川喜多映画記念館)での口頭発表「映画に吹く里見弴と鎌倉の風」、小津安二郎が少年期を過ごした三重県松阪市での上映会・トークイベント(於:松阪市産業振興センター)での小津亞紀子氏との対談などである。会場内外では監督縁の方々との交流を通じて新たな知見も得られた。その他、小津安二郎学会ウェブサイトにおいて情報公開も行った。 以上のように一次資料の記述をたどることに加えて、そこに記述されていない事柄、いまだ所在が明らかでない資料にも配慮しながら、調査を続けていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定に沿って順調に進められているが、高等学校国語教科書に『麥秋』のシナリオが掲載された経緯については突き止めるに至っていない。当時の資料は限られるものの、この点についてさらなる調査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象のうち、野田高梧の日誌は現在翻刻を進めており、新たな調査結果が得られる可能性がある。そうなれば既存の小津安二郎関連資料との比較も可能となる。新・雲呼荘 野田高梧記念 蓼科シナリオ研究所と協力しながら、鋭意翻刻を進めてゆく。
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