2021 Fiscal Year Research-status Report
アート・クラブ（1945‐1964）の世界展開と抽象芸術の組織論
| Project/Area Number |
21K00241
|
|---|
| Research Institution | Kyoto Seika University |
|---|
Principal Investigator |
鯖江 秀樹 京都精華大学, 芸術学部, 准教授 (30793624)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
利根川 由奈 文教大学, 国際学部, 講師 (90896010)
島村 幸忠 京都芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (10911901)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
| Keywords | 抽象芸術 / 具体美術運動 / 戦後日本美術 / ベルギー近代美術 / イタリア近代美術 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後美術の国際性を前提として、作品という具体物を周縁地にまで物理的に運搬し、作品に込められた理念を波及させる「媒介者としての組織」の実態を解き明かすことを目的としている。具体的には「アート・クラブ」という、国内外で本格的に考究されてこなかった「国際組織」について文献調査を進め、この美術団体が「芸術のプラットホーム」を準備したことを複数の観点から分析するものである。
2021年度、本研究チームはメンバーの所属先にてアクセス可能な図書館や文書館にて国内調査に専念した。前掲のバックナンバーを精査し、事実を突き合わせて日本におけるアート・クラブの活動を確認していく作業である。この点については感染症に伴う入館や貸出制限があることを見越して、メンバーがそれぞれ自身の専門分野について知見を深め、その成果の公開を積極的に進めることを申し合わせておいた。
結果として鯖江と島村が本研究とも強く関連する単著を刊行することができた。利根川もまた、所属する研究会においてベルギーのシュルレアリスムに関する研究発表を実施した。このように各人の研究はおおむね実り多いものとなったが、資料調査は順調だったとは言えない。それについては2022年度に感染症の状況に注意を払いながら調査をより迅速に進めていく。
資料について付言すると、2021年度には『美術批評集成 1955-1964』（藝華書院）が刊行された。本研究とも直接かかわる大部の労作であるが、これほど綿密な資料集成においてもなお、「アートクラブ」の足跡はやはり判然としないことが確認された。よってすでに再刊された雑誌も含めてより精密な分析を徹底することが求められている。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前項でも述べたようにアーカイブでの作業に遅延があることがその最大の理由である。現在もなお、海外の文献取り寄せにも大幅な遅れがあり、資料の読解そのものの機会が乏しい1年であった。
加えて利根川には本務校異動もあったため、授業準備もあって当初の予定通りにいかなかった。とはいえ資料や海外渡航については改善の兆しが見えつつあるため、後の項目で述べるように、2022年度は、前年度と同じくメンバー間での定期的な打ち合わせにより進捗を都度共有し、資料調査と現地調査の両輪を同時並行的かつできるだけ速やかに進めていく。
|
| Strategy for Future Research Activity |
代表者の鯖江は各メンバーとの連携を維持しつつ、勤務校が所蔵する美術批評雑誌の精読を継続する。2022年度より書庫への入場が許可されたため、以前よりもいっそう迅速に調査ができる環境が整った。海外調査については今年度は現地訪問を控え、予算を来年度に繰り越す予定であるが、ローマ第三大学のパオロ・ダンジェロ教授の協力のもと、ローマ現代美術館（MARCO)でのアーカイブ調査を適切に進められるよう調整をすすめていく。
国内・国外調査については利根川も足並みを揃える予定である。ただし、アートクラブの国際的な動向を把握するにあたってアレシンスキーをはじめとするベルギーのアーティストは鍵を握っていることは間違いないため、関連する調査および研究発表に参加することになるだろう。
また島村は、惜しくも中止となった展覧会「スーラ―ジュと森田子龍」（兵庫県立美術館）の担当学芸員に協力を仰ぎ、書とアートにまつわる国内の美術シーンについて調査する予定である。
|
| Causes of Carryover |
少額であるため、当該予算使用者である利根川と相談し、次年度以降の物品費として計上するよう依頼する。
|
| Remarks |
（１）次の図録の「展覧会規約（Regolamento della mostra）」を全訳掲載。Catalogo della prima Quadriennale d’arte nazionale, gennaio-giugno 1931 ANNO IX, Palazzo delle Esposizioni, Roma, Edizioni Enzo Pinci, 1931, pp. 11-16.
|
Research Products
(5 results)
-
-
-
[Book] 糸玉の近代2022
Author(s)
鯖江秀樹
Total Pages
327
Publisher
水声社
ISBN
978-4-8010-0628-7
-
-
