2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト胚のゲノム編集に関する法的ルール確立に向けた総合的研究
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21K00257
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
三重野 雄太郎 佛教大学, 社会学部, 講師 (40734629)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では、2021年度は、ゲノム編集と同様の論点を有する、着床前診断やドーピングをめぐるドイツの議論状況の整理を行う予定であったが、コロナ禍やスケジュール上の問題により、現地調査や資料収集が難しかったことから、計画を変更し、2022年度に予定していたゲノム編集に関するドイツの議論状況の整理も含めて、すでに入手できている資料の精読・検討を行った。 2021年度の研究成果の主たるものとしては、主にドイツにおけるゲノム編集をめぐる議論において重要となる、2017年ドイツ倫理評議会臨時勧告、2019年ドイツ倫理評議会声明の精読・検討を行い、以下の点を明らかにしたことである。 すなわち、2017年臨時勧告においては、倫理評議会は、広い議論と国際的な規制の必要性を指摘するとともに、議論すべき論点として、何を持って重大な病気とするか、どのようなリスクや害が想定されるか、また、どこまで想定可能か、着床前診断とどちらが問題が少ないか、などといった点を挙げている。 2019年声明においては、ヒト生殖系列は、絶対不可侵なものではないこと、生殖系列への介入についての判断に際しては、人間の尊厳、生命保護、インテグリティの保護、自由、害の回避、慈善、自然性、正義、連帯、責任、倫理的準則を考慮すべきであること、十分な安全性と有用性があることが、どのような場合であっても生殖系列への介入を許容する前提条件となること、ヒトの生殖系列への介入の臨床応用について国際的なモラトリアムの必要性、生殖系列への介入の影響について正確な視座を得ることを目的とした、試験管内胚を使用しない基礎研究が必要であることなどが確認されている。 なお、本研究に関係のある、刑事規制論や医療問題の法規制に関わるテーマとして、薬事広告規制や指定薬物の規制などの研究にも取り組み、別途記載の研究成果を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のとおり、当初の研究計画では、2021年度は、ゲノム編集と同様の論点を有する、着床前診断やドーピングをめぐるドイツの議論状況の整理を行う予定であったが、コロナ禍やスケジュール上の問題により、現地調査や資料収集が難しかったことから、計画を変更し、2022年度に予定していたゲノム編集に関するドイツの議論状況の整理も含めて、すでに入手できている資料の精読・検討を行った。まだ収集できていない資料や、この間に公刊された、あるいは今後公刊予定である関連資料の量が膨大であり、着床前診断、ドーピング、ゲノム編集をめぐるドイツの議論状況の整理にはなお多くの時間が必要となる。 本研究課題以外のテーマに関わる依頼原稿が集中してそちらに忙殺されたことや、コロナ禍で研究活動に様々な制約が多かったこともあり、予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、コロナ禍における様々な制約も緩和されてきているので、文献収集や現地調査もこれまでより行いやすくなると思われる。 2022年度は、着床前診断、ドーピング、ゲノム編集についてのドイツの議論状況の整理を完了させることができるよう、重要度が高く、比較的新しい文献の精読を進めていく。 昨年度は、コロナ禍における業務増大により研究時間を奪われていたこともあったが、2022年度は、昨年度よりも十分に時間が取れ、研究を進めることができる見込みである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で現地調査や文献収集ができなかったため、次年度使用額が生じた。 文献購入費、文献複写費、現地調査旅費、資料収集交通費などとして2022年度に使用する。
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