2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒト胚のゲノム編集に関する法的ルール確立に向けた総合的研究
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21K00257
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
三重野 雄太郎 佛教大学, 社会学部, 准教授 (40734629)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 着床前診断 / ドーピング / 遺伝子ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では、2021年度は、ゲノム編集と同様の論点を有する、着床前診断やドーピングをめぐるドイツの議論状況の整理を行い、2022年度にドイツにおけるゲノム編集をめぐる議論状況の整理を行う予定であった。しかし、コロナ禍やスケジュール上の問題により、現地調査や資料収集が難しかったことから、計画を変更し、2021年度に予定していたゲノム編集に関するドイツの議論状況の整理も含めて、すでに入手できている資料の精読・検討を行って、2022年度に着床前診断やドーピングの議論状況も並行して整理することとした。 2022年度の主たる研究成果としては、着床前診断とゲノム編集をパラレルに検討したことで、以下のような結論に至った点を挙げられる。ドイツにおいては、2011年の胚保護法改正により、着床前診断が、重篤な遺伝病の回避や染色体異常による流産・死産の回避の場合に、公的倫理員会の審査を経たうえで認められるようになったことが、ゲノム編集一部許容の根拠の一つとなっている。両者をパラレルに考えるのであれば、産まれてくる子どもんの重篤な遺伝病の回避や、染色体異常による流産・死産回避の場合にはゲノム編集を認める余地があり、着床前診断同様、遺伝病と関係のない単なる性選別や救世主兄弟、エンハンスメントを目的としたゲノム編集は認められないこととなろう。また、着床前診断と同様に、ゲノム編集についても公的倫理委員会が可否を判断したうえで行うというプロセスも考えられうるが、何をもって重篤な遺伝病とするのか、着床前診断に関しては、倫理委員会の判断にブレが生じているという実態があり、倫理委員会の審査結果を不服とした訴訟も相次いでいる。ゲノム編集についても同様の審査体制を設けるのであれば、こうした問題への対処の在り方を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、2021年度は、ゲノム編集と同様の論点を有する、着床前診断やドーピングをめぐるドイツの議論状況の整理を行う予定であったが、コロナ禍やスケジュール上の問題により、現地調査や資料収集が難しかったことから、計画を変更せざるを得なかった。また、同年度は、本研究課題以外のテーマに関わる依頼原稿が集中してそちらに忙殺されたことや、コロナ禍で研究活動に様々な制約が多かったこともあり、予定よりやや遅れていた。 そのため、2022年度は、遅れを取り戻すように進めたが、スケジュール上の問題や国際情勢等により現地調査の渡航が叶わないなど、なお様々な制約もあり、また、業務過多など諸事情により、遅れを取り戻すことがかなわなかった。 2023年度はサバティカルを頂き、時間に余裕があるし、最終年度であるため、集中的に取り組み、研究計画を完了させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度にサバティカルを頂いたため、集中して研究を進めることができる。 同年度は、これまでの研究を総括したうえで、ドイツにおけるゲノム編集をめぐる近時の議論状況の整理、日本における議論状況の整理を行ったうえで、日本におけるゲノム編集をめぐる法規制のあり方についての試論を構築する。 2023年度は、コロナ禍も収束し、これまでのような制約はほとんどなくなってきているので、文献収集や現地調査もこれまでより行いやすくなると思われる。 これまでと同様に、重要度が高く、比較的新しい文献の精読を優先的に進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍や国際情勢により、一番経費がかかる海外現地調査が行えなかったため、次年度使用額が生じた。2023年は、最終年度であるし、情勢も変わってきているので、繰り越し分を活用してドイツに渡航、現地調査を行う。
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