2021 Fiscal Year Research-status Report
ハーバード初の小児科正教授を取り巻く文脈―米国小児科学の〈母〉に着目して
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21K00258
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉岡 公美子 立命館大学, 法学部, 教授 (80240240)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 19世紀アメリカ史 / 小児科学史 / 乳児用調整乳 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハーバード初の小児科正教授となるT・M・ロッチは、幼少時に実父と祖父(母方)をほぼ同時に亡くしており、孤児ではないものの「遺児」であったことが明らかになった。ロッチ教授は後に、後継を期待された一人息子にも先立たれることになる。いずれもコレラやインフルエンザなど感染症が拡大した年に急逝しており、パンデミックがT・M・ロッチの人生と米国小児科学、小児病院・慈善施設のあり方に影響したことが示唆される。しかしながら、死因などまだ不明な点も多く、さらなる研究を要する。 ロッチ家の系譜はT・M・ロッチの曾祖父ウィリアム・ロッチ・ジュニアの直系の子孫によって纏められたため、ウィリアム・ロッチ・ジュニアが過大評価されるきらいがあることが判明した。フィラデルフィア生まれの傍系しかも遺児となったT・M・ロッチを捕鯨代理業のロッチ家につなぐ紐帯は、父、祖父という父系のつながりよりもむしろ、妻ヘレンとのクエーカー的内婚によるものである。妻ヘレン・モルガン・ロッチに関する調査を進めているが、適切な史料が見つからず難航している。 捕鯨業の衰退を背景に徐々に没落するロッチ家の財政的支えは、ヘレンの父チャールズ・W・モルガンであった。その日記からは、ヘレンの母サラが製鉄などのベンチャー的新規事業に参画していたことがわかる。むしろチャールズよりも才覚があったのはサラであった可能性すら示唆される。引き続き、文献研究をすすめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症の拡大状況および自身の健康上の理由から、まだ渡米を差し控えている。オンラインで入手できる史資料に限定して研究をすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
渡米よりもむしろ現地での研究支援者を得る方向で、New Bedford Whaling Museum、Mystic Seaport Museumなどが所蔵する史資料の調査を進める可能性を探る。
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Causes of Carryover |
感染拡大により、米国の諸施設の稼働状況および提供されるサービスに制約が生じ不安定であったため、進捗が遅れている。2022年度中に渡米が実現した際には、隔離待機期間や円安・物価高騰などの影響で、当初計画よりも経費がかさむことが懸念される。
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