2021 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative reconstruction of relationship between population, disease, medical history and the role of medical care and public health in modern Japan
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21K00260
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
逢見 憲一 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (70415470)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | “スペインかぜ” / 内務省衛生局 / 大日本私立衛生会 / 年齢調整死亡率 / 老衰 / 脳血管疾患 / COVID-19 / パンデミック |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,以下のように進捗した。【スペインかぜ流行とわが国の衛生行政―内務省衛生局『流行性感冒予防心得』と大日本私立衛生会『予防注意書』の比較を中心に―】わが国の“スペインかぜ”の流行初期に発行された内務省衛生局と大日本私立衛生会の注意書を比較した。【近代移行期から第二次世界大戦前(中)後の死亡・死因研究に関する展望】1920(大正9)年の国勢調査以前の人口推計から年齢調整死亡率等の年齢・死因構造の分析を試みた。【2000年~2015年のわが国年齢調整死亡率の死因構造変化とその死因統計上の要因】表記期間の年齢調整死亡率低下には,「急性心筋梗塞」「脳梗塞」等の大幅な減少が寄与していたが,ほとんどは「~,詳細不明」の死亡の減少によるものであったこと,「心停止」,「老衰」は,増加していたことが示された。【2020年1月から2021年4月以降の年齢調整死亡率とインフルエンザ・COVID-19超過死亡の推定】月別年齢階級別死亡数および人口推計を用いて超過死亡数を推計した。【医史学から展望するCOVID-19パンデミック】日本医史学雑誌にて,表記題名の座談会を行った。 令和4年度は,以下について研究を進展する予定である。【データ入力】衛生局年報1880(明治13)7月~1883(明治16)死亡者府県月別,衛生局年報1877(明治10)~1899(明治32)府県別虎列剌・赤痢患者および死者,等。【2000年以降わが国死因別齢調整死亡率とインフルエンザ・COVID-19超過死亡】【2000年以降わが国インフルエンザ超過死亡と予防接種,投薬,ウイルス循環の役割】【2000年~2015年のわが国における年齢調整死亡率低下の年齢・死因構造】【第二次世界大戦前わが国の年齢調整死亡率推移の年齢・死因構造と医療・公衆衛生の役割】等。 なお適宜,研究順序やテーマの入れ替え・変更を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【スペインかぜ流行とわが国の衛生行政―内務省衛生局『流行性感冒予防心得』と大日本私立衛生会『予防注意書』の比較を中心に―】わが国の“スペインかぜ”の流行初期に発行された内務省衛生局『流行性感冒予防心得』と大日本私立衛生会『予防注意書』を比較した。 私立衛生会『注意書』は,人々の理解にもとづいた行動の変容という“ポピュレーション・ストラテジー”を見出していたのに対して,衛生局『心得』は,感染源の特定,隔離といった,“ハイリスク・ストラテジー”から脱却できなかったことが示唆された。 【近代移行期から第二次世界大戦前(中)後の死亡・死因研究に関する展望】1920(大正9)年の国勢調査以前の人口推計から年齢調整死亡率等の年齢・死因構造の分析を試みたところ,感染症死亡の増大が示唆される一方,死因不詳・不明も多く,分析の困難が予想された。 【2000年~2015年のわが国年齢調整死亡率の死因構造変化とその死因統計上の要因】表記期間の年齢調整死亡率低下には,「急性心筋梗塞」「脳梗塞」等の大幅な減少が寄与していたが,ほとんどは,死因分類上「~,詳細不明」の死亡の減少によるものであったこと,「心停止」,「老衰」は,かえって増加していたことが示された。その理由としては,死亡診断書作成時の死因の記入傾向の変化が考えられた。 【2020年1月から2021年4月以降の年齢調整死亡率とインフルエンザ・COVID-19超過死亡の推定】月別年齢階級別死亡数および人口推計を用いて超過死亡数を推計した結果,わが国では,COVID-19流行の始まった2020年1月から10月までは,死亡が減少して負の超過死亡を示していた。これは人の流れの抑制等によりインフルエンザ死亡などが減少したためと考えられた。 【医史学から展望するCOVID-19パンデミック】日本医史学雑誌にて,表記題名の座談会を行い,同誌67巻3号に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
【資料の発掘と収集,基礎的分析】データ入力:衛生局年報1880(明治13)7月~1883(明治16)死亡者府県月別,衛生局年報1877(明治10)~1899(明治32)府県別虎列剌・赤痢患者および死者,等。 【2000年以降わが国死因別齢調整死亡率とインフルエンザ・COVID-19超過死亡】2021年以降世界的に流行しているCOVID-19によるわが国の健康被害を定量的に把握し,2000年以降の死因別死亡の推移と合わせ考察し,わが国の医療および公衆衛生政策に資するため,月別年齢階級別死亡率から,超過死亡数を推計する。 【2000年以降わが国インフルエンザ超過死亡と予防接種,投薬,ウイルス循環の役割】上記,わが国のCOVID-19超過死亡を定量的かつ精密に推計するため,2000年から2019年の,とくに高齢者のインフルエンザ超過死亡を推計する。あわせて,インフルエンザ超過死亡の変化に対して予防接種の果たした役割を検討し、A(H1N1)pdm09型インフルエンザ,いわゆる“新型インフルエンザ”流行による影響を定量的に把握する。 【2000年~2015年のわが国における年齢調整死亡率低下の年齢・死因構造】上記,2000年以降わが国のCOVID-19超過死亡とわが国近年の死亡動向をより定量的かつ精密に考察するため,2000年から2021年の全国について,死因別年齢調整死亡率を算出し分析する。 【第二次世界大戦前わが国の年齢調整死亡率推移の年齢・死因構造と医療・公衆衛生の役割】これまで分析が十分に行われてこなかった1920(大正9)年の国勢調査以前のわが国における人口・疾病構造の転換と医療・公衆衛生の役割について定量的に検討を試みるため,1890(明治23)年から1940(昭和15)年の全国について,死因別年齢調整死亡率を算出する。 なお適宜,研究順序やテーマの入れ替え・変更を行う予定である。
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Research Products
(10 results)