2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00262
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤井 史果 富山大学, 学術研究部人文科学系, 講師 (20828868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 十返舎一九 / 滑稽本 / 噺本 / 洒落本 / 黄表紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、十返舎一九の膨大な著作の中でもとりわけ大きな位置を占める会話体形式の作品を対象として、表記・表現面における特色とその変遷について検討を加え、一九の編集意識および文芸領域に対する認識について明らかにすることを目的としている。 2021年度は、十返舎一九の数多くある著作のなかでも、主として会話を中心に展開する、または発話を多く含む文芸作品(噺本・滑稽本・黄表紙・洒落本)を対象として調査を進めた。 とくに静岡市立中央図書館木村文庫(故木村豊次郎氏旧蔵の一九の版本コレクション)に所蔵されている作品を中心に、一九作品の紙焼を収集・整理し、分析をおこなった。 また、「十返舎一九年譜稿」(中山尚夫『十返舎一九研究』所収、おうふう、2002年)に基づき、収集した作品を成立順に整理し、その表記・文体・表現の特徴について調査するとともに、各資料を文芸領域ごとに分類し、書誌情報と概要を把握した上で、成立順に一覧を制作している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、webサイトおよび研究機関で公開されている資料のうち、十返舎一九の手掛けた会話体文芸について調査・研究を進めた。具体的には、静岡市立中央図書館の木村文庫に所蔵されている一九作品の画像や紙焼をもとに、一九の関与の度合い(自作・合作・校合のみ・序跋のみ等)について検証・判別する作業を行っている。 画像が公開されておらず、内容が確認できない資料については、実地調査をおこない、書誌情報の収集及び画像の撮影をおこなう予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、原本の調査が難航したため、次年度に延期することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度におこなった一九の会話体文芸の原本調査を継続する。 国文学研究資料館・国会図書館をはじめとする研究機関のwebサイトで公開されている資料のうち、一九の手掛けた会話体文芸における特質について調査・研究をおこなう。 また、「十返舎一九年譜稿」(中山尚夫『十返舎一九研究』所収、おうふう、2002年)に基づき、収集した作品を成立順に整理し、その表記・文体・表現の特徴について調査するとともに、文芸領域別に一覧を作成する。 十返舎一九の作品中における会話体表記に加え、発話・会話における描写が作品にもたらす効果について検討する。 具体的には、十返舎一九の代表作でもある『東海道中膝栗毛』をはじめとする会話体文芸に焦点をあて、表記だけでなく、表現、とりわけ発話を描写する際のオノマトペについて検討するとともに、その特徴について明らかにし、その成果を研究論文「十返舎一九の会話体文芸にみる音声描写」(『日本文学』第58巻第10号、2022年10月)として発表予定である。
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Causes of Carryover |
出張費として予定していた予算について、新型コロナウイルスの感染拡大により、県外への移動が困難となり、資料の原本調査が進められなかったため。 2022年度は研究協力者(複数)の協力を仰ぎ、300種以上あるとされる一九の著作に関するデータの入力および紙焼の整理を進める。 また、延期していた各地の資料館および図書館に所蔵されている原資料の調査および複写物の収集を進める。
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