2021 Fiscal Year Research-status Report
帝国日本の情報統制データ網と闇ルートの機能に関する研究
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21K00271
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 教授 (30579107)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 検閲 / 朝鮮総督府図書課 / 内務省図書課 / 出版警察 / 社会主義 / 移動 / 出版市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
1920年代半ばから1940年代はじめまで、帝国日本の検閲システムは、内地―朝鮮―台湾―満洲を繋ぐ形で膨大なデータ網を構築しながら拡張した。本研究は、①このようなデータ網と、②それに痕跡を残さない形で日本帝国の法域を潜り抜けるための「闇ルート」が同時に機能していたことに注目し研究する。その上①と②がGHQの検閲や冷戦構造を媒介に、旧植民地の軍事独裁政権による検閲の中で、どのような役割をはたしていたのかについて明らかにすることを目的とする。 データ網について理解するためにはデジタル人文学に関する理解が必要である。2021年度はこの分野で最も注目されている韓国のOH YoungJin氏(漢陽大学兼任教授)をお招きし、ワークショップ「なぜ!PCゲームはこの時代の新しい文学なのか」(5月12日開催)について講演をしていただいた。また本研究の土台を作るためには、物質としての日本語書物をめぐる朝鮮・台湾・日系コミュニティの受容に関する理解が必要である。国際会議「『書物の近代』からそれぞれの「書物」の近代へ」を開催し、紅野謙介氏(日本大学)・Edward Mack氏(ワシントン大学)・五味渕典嗣氏(大妻女子大学)・黄鎬徳氏(韓国成均館大学)・中野綾子氏(明治学院大学)・呉佩珍氏(台湾国立政治大学)に登壇していただき、近代以後の日本語書物の移動と交錯について議論した。シカゴ大学の崔キョンヒ氏とは検閲をめぐるデジタル人文学の成果を踏まえながら、英語と韓国語の共著の執筆を続けている。韓国圓光大学の金在湧氏が中心になっている台湾・中国・日本・韓国の研究者との共同研究も続いており、「2021 東亜植民地主義と文学会議」(10月23日開催)では日本帝国と植民地の知の循環について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる2021年度は、基礎的な資料の集めと、研究成果の公開方法の模索、共同研究の基盤作りを行った。本研究を本格的に進めるために、文学とメディア環境研究会を作った。すでに2回の国際会議を開催している。デジタル人文学の方向から検閲資料を研究するために、朝鮮総督府図書課に関する資料を分析した経験のある孫ソンジュン氏(韓国海洋大学准教授、「韓国近代文学 検閲研究の統計的接近のための試論」『外国語文学』38号、2010年)、李ジェヨン氏(蔚山科學技術院准教授「国文学の文化社会学と遠読―新しい検閲研究のために」『大東文化研究』111号、2020年)と連携をとりながら、基礎的なデータ構築の方法について学習した。また二人の成果の日本語訳も進めている。シカゴ大学准教授の崔キョンヒ氏は朝鮮総督府による検閲研究の専門家である。現在も定期的に、スカイプやZoomを利用し、英語による共同研究論文の執筆のための研究会を続けている。2021年度に崔氏は、サバティカルで韓国に滞在しており、コロナ禍の影響で調査が進まなかった朝鮮関連の資料の集めに協力していただいた。また、韓国圓光大学の金ジェヨン氏との共同研究の成果を韓国語で発表した(『東アジア植民地文学比較研究 日中戦争以降を中心に』ソミョン出版、2021年12月)。2022年は韓国語季刊誌『地球的世界文学』に、2021年度の研究成果を発表する予定である。異なる地域、異なる空間を生きる研究者とネットワークを構築することにより、単独の研究では実現しえなかった多元的な側面からの研究基盤作りが固まりつつある。その意味において、最初に提出した研究目標を充分に達成することが出来たと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
①昨年に引き続き、朝鮮総督府の検閲資料をデジタル人文学の方法で研究している孫ソンジュン氏、李ジェヨン氏と連携をとりながら、日本帝国の検閲資料のデータを集め、デジタル人文学の方法で分析を進める。②学生アルバイトの助けを借りながら、集めた資料を整理する。これらの資料、特に日本語の資料の分析方法を考えるために、日本学研究者との共同研究の基盤作りを試みたい。③2023年3月は崔キョンヒ氏の招待でシカゴ大学に2週間以上滞在しながら、検閲の関する国際会議の開催、資料の調査、共著の執筆を進める予定である。研究成果の一部は、もしAASパネル応募に採択されたら、2023年3月ボストンで発表する予定である。また、2023年はじめに香港大学のSuYun KIM氏、Pei-yin LIN氏・ベトナム国家大学ホーチミン市校(人文社会科学大学)のKhueDieu DO氏らと共催という形で、香港大学で国際会議を開く予定である。金ジェヨン氏をはじめ中国・日本・韓国・台湾の研究者と、帝国日本の植民地政策と文学・文化に関する国際会議を、今年度8月に東京都立大学で共催する予定である。全ての会議はコロナ禍の状況次第では時期をずらすか、ZOOM開催に変える可能性はあるが、共同研究は続ける予定である。④6月はUS Riverside主催のTPW会議で、7月はASCJでパネル“Between the Transnational and the International”に参加し、研究成果の一部を発表する予定である。また本科研の期間内に研究成果の一部を公開するために、単行本を執筆中である。出版社もすでに決まっており、できれば今年度中に刊行できればと思っている。
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Causes of Carryover |
2021年2月に、資料調査のための韓国出張を予定していたが、新型コロナウィルスの影響で中止せざるを得なかった。来年度は、コロナ禍の状況を見ながら時期を調整し、韓国に2回ほど出張し、1週間以上滞在しながら、韓国国会図書館・ソウル大学図書館・延世大学図書館・成均館大学図書館などで資料調査を進めていきたい。特に、植民地朝鮮で刊行された日本語の雑誌、朝鮮語のチラシ、手書きのメディアに関する資料を集めたいと思っている。
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Research Products
(20 results)