2023 Fiscal Year Research-status Report
平安時代文学、特に和文と歌謡にみられる韻律的表現の研究
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21K00275
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
陣野 英則 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40339627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 悠希 立正大学, 文学部, 教授 (40732756)
山崎 薫 盛岡大学, 文学部, 准教授 (90822958)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 和文 / 韻律的表現 / 枕草子 / 宮廷歌謡 / うつほ物語 / 源氏物語 / 同語・同音の反復 / 笑い |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度も前年度までと同様に、研究代表者、研究分担者(2名)、および早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程の学生(1名)の計4名による小さな研究会を計4回開催した(いずれもZoomミーティング利用による)。まず、第11回(6/11)では、山﨑薫が「近江君と歌謡」という題で『源氏物語』と歌謡との関わりについて、今様、口承文藝などにまで射程を拡げて発表した。つづいて第12回(7/22)では、山中悠希が「平安仮名文学の本文の韻律性と後世における受容」と題して『枕草子』の韻律性とその展開・受容について発表した。なお、その発表内容は、8月にGhentで開催されたEAJSでの研究発表へと結びついた。次の第13回(11/24)では、藤澤咲良が「『うつほ物語』の神楽と芸能的表現」の題で、芸能にみられる韻律的表現と諧謔性について発表した。さらに第14回(2/4)では、山﨑薫が「『源氏物語』における歌謡の「古めかしさ」と「今めかしさ」」という題で、玉鬘・近江君などに関する検討を行った。以上の研究会活動により、それぞれが主たる対象としているジャンルあるいは作品にみられる韻律的表現とそれに付随する諧謔性などに関する特徴、またそれらの受容について、参加者の間で共有することとなった。 さらに、本研究課題と関わる成果としては、物語文学と催馬楽・風俗歌との関わりを論じた山﨑薫の研究書が刊行された(志田延義賞を受賞)。また、堺本『枕草子』本文に関する新資料をとりあげた研究論文がまとめられた(山中)。一方で、韻律的表現と関わりのある笑いについて、パリ・シテ大学での国際研究集会で発表を行った(陣野)。 加えて、和歌の韻律性がどのように翻訳されうるのかという問題も、本研究の課題と関わりをもつことから、特に『六百番歌合』の英訳などで著名なトーマス・マッコーリ氏(シェフィールド大学)の講演会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の3年目も、オンラインによる4回の研究会を実施することにより、それぞれの研究の進展を図るとともに、『枕草子』、『うつほ物語』、『源氏物語』などにみえる韻律的表現について、また歌謡の各ジャンルに関して知見を共有する機会を得た。また、この研究会での発表内容の一部を論文化することもできた。 他方において、EAJSでこの研究プロジェクトのメンバーを中心にしたパネルを組み、発表するという当初の計画はかなわなかったものの、研究分担者の山中悠希がGhentで開催されたEAJS(2023年8月)にて研究発表を行い、日本古典文学における韻律的表現の重要性を国際的な場所で多くの研究者たちに向けて示すことができたのは、何よりのことであった。さらに、韻律的な表現との関連を有する笑いの問題へと研究を展開させてゆくための端緒もつかみはじめたことなどから、全体としては「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトの最終年となる4年目も、これまでと同様に、4人による研究会を基本的に2ヶ月もしくは3ヶ月に一度のペースでひらく予定である。ひきつづき、それぞれの研究の深化を図りつつ、和文における音韻、韻律の問題、またそれに関わる諸問題などについての探究へと繋いでゆきたい。また、それぞれの研究会での発表を論文化してゆくこともめざす。 一方で、韻律的な表現との関わりがある笑いという問題については、陣野が2023年度の後半から取り組み始めている。この研究テーマについては、フランスのダニエル・ストリューヴ氏(日本古典文学)が共鳴してくださり、2024年3月には氏が所属するパリ・シテ大学に客員研究員として陣野を招聘するとともに、「笑い」をテーマとする国際研究集会も開催されることとなった。ストリューヴ氏との間では、この一度だけの研究集会で終えるのではなく、日本古典文学の「笑い」をテーマとして継続的な研究プロジェクトを展開しようという相談も開始している。この企画は、当該科研費の研究期間中の方策というよりも、その後につづくものというべきではあるが、2025年度以降の展開の可能性として記しておく。
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Causes of Carryover |
当初は、3名程度がGhent(Belgium)に出張し、同地で開催されるEuropean Association for Japanese Studies(EAJS)でのパネル発表を行うことを想定していたものの、特に研究代表者の諸般の事情により、パネルとしての参加を見送ることとなった(ただし、研究分担者1名は参加して研究発表を行っている)。そうした事情、ならびに関係の研究書などについての慎重な吟味により次年度に購入を見送ったことなどにより、次年度使用額が生じている。 2024年度は、当該の研究課題とその展開のために必要となる研究書などを購入するとともに、調査のための旅費などに充ててゆくことになる。
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Research Products
(13 results)