2023 Fiscal Year Research-status Report
江戸後期・明治期の地名に由来する表象文化の再生産と増殖の実態を解明する研究
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21K00276
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
平林 香織 創価大学, 文学部, 教授 (50300132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 善隆 立正大学, 文学部, 教授 (30287940)
稲葉 有祐 和光大学, 表現学部, 准教授 (90649534)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近世文学 / 俳諧 / 和歌 / 地誌 / 地名 / 旅日記 |
Outline of Annual Research Achievements |
地名表象文化の資料収集及び個々の資料の調査・研究についてはおおむね順調に進行している。ホームページ地名・名所資料庫については、構築が終了し、氏名・名所関係の資料を掲載する準備が整った。ただし、大量の資料のアップデート作業が遅れ気味である。昨年度は2万点に及び資料の撮影・整理を行ったので、逐次それらをアップして、公開にこぎつけたい。 また、地名リテラシー研究会を肥後フォーラムというかたちで開催し(一般公開)、研究代表者、研究分担者、研究協力者間で、研究の成果を報告した。各地の地名表象が、それぞれ独自性を保つ一方で、相互に影響し合いながら、連環性をもっていることが確認できた。個人のアイデンティティを担保するものとして、旅日記や道中記の類が大量に出版されるようになり、それが刺激となり、さらに地名表象が増殖していく実態が明らかとなった。また、地名表象は、諸藩のアイデンティティを担保するものでもあり、時代が下るにしたがってその都度地名表象が上書きされていることも、地名表象の重要性を物語っていることが明らかとなった。 熊本細川藩関連の治水事業の実態を、実際に水前寺成趣園周辺をめぐることで感得することができた。水辺表象はとりわけ文学的情趣とともに流通や農耕といった社会経済問題ともかかわり、地名リテラシーの根幹を担い、単なる景観の問題にとどまらない重要な要素であることがわかった。また、町立高鍋図書館所蔵の高鍋藩関連の地名表象についても調査を行い、幕末期の藩主夫人や藩士夫人たちの旅の実態をりかいすることができた。 歴史的な時間を内包している地名が、同時代に生きる人々によって再認識された結果として地名表象として大量に生産されている実態の解明が進んでいるというのが現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としてはおおむね順調に進展しているが、ホームページ「地名・名所資料庫」が、いまだ一般公開にいたっていない点が当初の計画より若干遅れている点である。
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Strategy for Future Research Activity |
ホームページ「地名・名所資料庫」の一般公開に向けて、データのアップデート作業を進めたい。まだ、未撮影の資料についても早い時期に撮影を行い、ホームページの完成をめざす。共同研究者同士、また、webデザイナーとの連絡を密に行い、今年度中の早い時期にホームページの公開が行えるようにしたい。
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Causes of Carryover |
出張の際の当初予定の運賃を下回ったため旅費において若干の余剰金が生じた。次年度の旅費に組み込み使用する予定である。
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