2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀日本文学史における仮名垣魯文の史的位置に関する研究
Project/Area Number |
21K00287
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
高木 元 大妻女子大学, 文学部, 教授 (00226747)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 仮名垣魯文 / 鈍亭魯文 / 19世紀文学史 / 近世日本文学史 / 近代日本文学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、明治維新という政治経済構造の変革に則して近世と近代とに分断して記述されてきた日本文学史を、十九世紀という時間的枠組みに拠って通史的に記述し直すことにある。 今回は、とりわけ仮名垣魯文に注目してみた。魯文はこの幕末開化期に活躍したにも関わらず、『安愚楽鍋』や『西洋道中膝栗毛』などにのみ研究が集中し、非文学的な報条(引札)や浮世絵に入れられた填詞(解説文)や、他の作者の執筆した本に寄せた序跋文、さらに俗謡書に入集したものなどには注目されてこなかった。これらの資料の大半が既に散逸してしまい、蒐集に困難をきわめたからである。そこで、本研究では可能な限りそれらの非文学的な資料を博捜して蒐集して書誌やテキストを記録し、可能な限り魯文が書き残したあらゆる資料の全体像を見きわめようとするものである。 例えば報条などは、一点で保存されていることはなく、多くの場合は貼込帖(スクラップブック)に見出すことがあるくらいであるが、各機関に保存されている貼込帖には、詳細な目録が整備されていることは滅多に無く、実際に全ページを繰って目で見て探すしかないのである。しかし、この二年間のコロナ禍で多くの研究機関の資料閲覧が思うように出来なかった。 その困難の中で、本年のトピックは偶然にも東京都立中央図書館蔵特別文庫室所蔵『鶏肋雑箋』という大部の貼込帖に魯文の報条を見出すことが出来たことである。この資料には多数の魯文の報条が添付されており、この詳細については、既に年度末に発行された紀要に紹介済みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ここ二年間は、コロナ禍の影響で在外資料の調査には一度も行けずにいる。特に浮世絵に関しては海外の方が纏まったコレクションが多いので困ったことである。また、国内の各機関も閲覧制限が多く、自由に調べに行ける状況ではなかった。 そこで、国内の古書市場に流通する資料を博捜し、可能であれば購入した。また、海外の古書肆や諸機関が、近年ウェブ上でも多くの画像データを公開しており、これらの閲覧とデータの保存で、ある程度の資料の閲覧が可能であった。 また、初年度に整備できたNASに拠って、今迄に蓄積してきたデータの保存と整理並びに安全なバックアップが出来たことは成果の一つであった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は海外の諸機関へも調査へ出向きたいのであるが、コロナ禍の状況次第である。また、国内に関しては、少し状況が良くなっているようなので、京都大学など地方の諸機関へも足を運びたい。 とにかく、捜している資料の多くが非文学的な実用品であり、既にその大半が散佚してしまったと思われる。その上、どれも片々たる物ばかりなので、蔵書をオンラインデータベースで検索して見付かるわけではない点に苦労する。可能な限り未見の貼込帖を見付けて片端から見るしか方法がないので、地道に努力したいと思う。
|
Causes of Carryover |
予定していた国内外の機関への出張がコロナ禍のために出来なかったため、旅費が未執行になってしまった。今年度、状況が許せば精力的に調査へ出掛けたい。
|
Research Products
(4 results)