2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00291
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
長島 弘明 二松學舍大學, 文学部, 教授 (00138182)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 建部綾足 / 画賛 / 俳諧 / 片歌 / 絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度に当たる本年は、綾足の俳諧・片歌・和歌(短歌・長歌)と物語・絵画の関係について研究を進め、次のような成果を得た。 1.綾足の自画賛を検討し、賛として書き込まれている俳諧・片歌・和歌と絵の関係を考察した。当然のことではあるが、賛として片歌唱道以前の俳諧の発句が記されている画は、人物や猫、象などの動物が描かれ、滑稽・飄逸な味わいがあるものも少なくない。それが片歌の時代になると、描かれるのは水鳥や苫船など、漢画の題材にもなり得るような伝統的な題材が多くなり、滑稽味もなくなってくる。 2.俳画における画と賛句の関係であるが、もちろん画賛そのものの作成手順としては、画が描かれるのと、句が書き付けられるのは、原則として同時である。しかし、その句自体は以前に詠まれた旧作であることが多いことが、画賛の署名(俳号)等から推測される。 3.綾足自画と推測される『本朝水滸伝』の挿絵と本文の関係は、ある意味では、自画賛における画と賛の関係と類似している。俳画において、賛句が単なる画の説明になってしまうことを避けるため、画は賛句と微妙な点で異なるように描かれることが多いが、『本朝水滸伝』の挿絵にも、同様の意識が感じられる。 4.片歌唱道以前の俳諧の歳旦帳には、綾足自画の挿絵があるものが少なくないが、 これは発句を賛とした自画賛の画と同じ意識で描かれている。もっとも歳旦帳という制約のもとで、必然的に歳末・新年の景物が主となってしまうため、画賛ほどには画がバラエティに富んでいず、また滑稽・飄逸身もやや薄くなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のために、遠方に出張して調査に当たることができなかった。そのため、遠方にある一部の資料の閲覧は予定通りに進まなかったが、それ以外の点では、ほぼ順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の2年目、3年目の研究は、綾足の読本についての考察、綾足の画、句歌、物語、国学等の多領域にわたる活動の意味についての考察を中心に行うが、コロナが落ち着いた暁には、初年度に当たる本年度に調査し残した資料を是非調査し、初年度の研究の補正を行いたい。
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