2022 Fiscal Year Research-status Report
「負け方」の問題――戦後日本における敗北の語りの歴史的分析
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21K00293
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
五味渕 典嗣 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10433707)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日中戦争 / アジア太平洋戦争 / 戦争文学・戦記文学 / 戦争映画 / 戦争記憶 / 東アジア / アダプテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は「研究の展開期」と位置づけ、とくに以下の3点に焦点化した研究を行った。 (1)占領期から1950年代初頭にかけての文学テクストや映画を取り上げ、アジア太平洋戦争における帝国日本の敗北がどのように語られ、意味づけられているかを集中的に検討した。具体的には、横光利一の小説「微笑」(1948年)の分析を通じて、戦時末期の日本における軍事研究の記憶が戦後の言説空間の中に亡霊のように召喚され、受容されていった様相を明らかにした。また、5月には川口隆行氏(広島大)を招聘し、同氏の著書『広島 抗いの詩学 原爆文学と戦後文化運動』(琥珀書房)にかんするワークショップを開催、核・原爆をめぐる表現と朝鮮戦争やシベリア抑留などの歴史的・社会的契機との相関や葛藤について議論を重ねた。 (2)日本社会における「敗北の語り」の定着期として1960年代に注目、とくに半藤一利のノンフィクション『日本のいちばん長い日』(1965年)の二度の映画化と、アダプテーションのコンテクストとなる天皇(制)研究との関連について検討した。また、占領期から1960年代にかけての文学、映画、絵画で「8月15日」と「玉音放送」の記憶がどんな表象において語られてきたか調査を進めた。 (3)ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、現代日本の表現者たちが過去の日本の戦争、とくに戦時末期の日本社会をどう表現しているかを検討した。とくに、近年注目すべき作品が多く発表されているエンターテインメント系作家の戦争小説に注目、その語りや表現の特質、傾向にかんする調査と分析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響で国外での調査出張は難しい状況が続いたが、国内の図書館・資料館での調査に集中することで、日本社会における「敗北の語り」の生成と展開については、ほぼ予定通り研究を進められている。また、国外の研究者とはオンラインを通じた連携を継続しており、次年度以降の研究活動につながる研究上のつながりを確保している。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の最終年度である2023年度は、研究の「完成期」と位置づけ、新型コロナウイルスの影響で着手できなかった課題への取り組みと研究成果の発信に努めたい。具体的には、所属研究機関のプロトコルを遵守しつつ、国外の戦争博物館・記念館で日中戦争・アジア太平洋戦争の公的な記憶がどのように語られているかを調査したい。また、この2年間の研究活動について(1)アジア太平洋戦争末期から占領期にかけての「敗北の語り」の生成、(2)1960年代の「敗北の語り」の展開と受容という二つの観点から取りまとめ、研究成果として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、所属研究機関でも新型コロナウイルス感染拡大を受けた国外出張自粛が緩和されたが、調査先での感染状況や航空運賃・滞在費の高騰などの状況を総合的に判断し、調査出張の実施を2023年度に先送りしたため。
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Research Products
(3 results)