2022 Fiscal Year Research-status Report
周縁にて女性が書く行為をめぐる言説構造の解明:現代沖縄文学の多層性への新たな視座
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21K00299
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
翁長 志保子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 講師 (70805671)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 沖縄近現代文学 / 女性文学 / 周縁性 / フェミニズム批評 / 日本近現代文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1970年代から90年代初頭に登場した沖縄に関わる女性作家たちの活躍に焦点を置き、女性が書く行為をめぐる言説構造について分析を行う。その目的を達成するため、本年度は以下のような取り組みを行った。 1)【基礎的資料の収集・整理】今年度の成果である女性作家の「海」にまつわる言説収集のために、沖縄県内図書館等での資料調査・収集に加え、地元古書店から当該研究に関わる雑誌等を中心に取り寄せ、当時の言説に関する調査を行った。また、並行して文献複写や相互貸借を活用し、沖縄県内外の研究施設にある関連資料の収集を行い、女性作家の状況を体系的に把握する基礎研究に努めた。 2)【学会・講座等での成果発表】社会文学会大会(10/29)にて、沖縄の女性作家の作品に見られる「海」と「死」に関する記述を分析した「沖縄を語る言葉と空間の再編――女性作家の「海」に関する表象を中心に――」を発表した。また、高知ペンクラブの文芸講演(11/19)にて、「沖縄文学と<復帰>ーー<復帰>という未完の問いーー」というテーマで、沖縄における女性作家の活躍と<復帰>にまつわる言説空間の関わりについての研究成果を講演した。 3)【論文の学会誌への投稿・採用】本年度は2本の論文が学会誌に採用された。沖縄の女性作家・山里禎子の作品「ソウル・トリップ」を分析対象とし、障害を持つ主人公の「自己決定」に内在する新自由主義的な思想の危うさについて論じた「新自由主義下の沖縄における障害者の自己決定(不)可能性―山里禎子「ソウル・トリップ」論」が『日本近代文学』(第107集)に査読Aで掲載された。また、10/29の社会文学会の大会で発表した内容をより深めた「「海辺」に「死」を語り継ぐ女たちの連帯ー沖縄の「海」をめぐる言葉と空間の撹乱ー」を『社会文学』(第58号)に投稿し採用され、今後掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における第一段階に示していた山里禎子「ソウル・トリップ」論を完成させ、学会誌へ投稿・採用の成果を年度当初において達成することができた。 また、基礎資料の調査・収集に加えて、具体的な資料の分析に取り組む過程で、本研究後期において行う予定であった「海」に関する研究が予想以上に進んだため、田場美津子「仮眠室」の作品分析に力を入れる予定であった昨年度末時点の計画を変更し、資料の分析から見いだされた女性作家の作品に登場する「海」と「死」に関する表象の研究を中心に行うことで、当該テーマについての学会発表と、学会誌への論文の投稿を達成するに至らせた。 また、同調査・資料の分析の過程で、奄美出身の作家である島尾ミホの作品への新たなアプローチの視点を発見した。島尾ミホの小説作品・エッセイやミホに関わる言説の形成に、ミホの配偶者である島尾敏雄が唱えたヤポネシア論と復帰論がいかに関わりうるのかについて、今後、研究を重ねるための道筋を立てることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の主な推進方策は、引き続き基礎的な資料の調査・分析に努めつつ、具体的な成果につなげることを目標に、具体的な作品の分析(田場美津子「仮眠室」、島尾ミホ・島尾敏雄関連作品など)をすすめていくことである。また、次年度には本研究の集大成を示していく必要があるため、個々の研究実績の積み重ねのみならず、本研究全体を通してのテーマや研究同士のつながりを意識しながら、より体系的な研究になることを目指すような方向性を打ち出すことを具体的な成果と並行して行いたい。 具体的な推進計画としては、昨年度に引き続き、島尾ミホ・島尾敏雄に関する資料の調査・分析を進め、成果を出すことを目指すことを掲げている。また、田場美津子「仮眠室」における堕胎と戦争の記憶の描き方関する分析を行い、沖縄に住む女性たちの妊娠・堕胎をめぐる言説について作品を中心に据えながら批判的に考察を深めた上で、学会発表等の場で成果を披露したい。 加えて、今年度新たに取り組むべき課題としては「ヤマト嫁」関連の資料の収集と、整理・分析に加え、沖縄と関わりのある作品を残している石牟礼道子や干刈あがたなど女性作家の作品や周辺の言説の収集、整理・分析に務め、新たなテーマを見出すことで、更に研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度まで、引き続きコロナ禍の影響下により移動が制限されていた兼ね合いもあり、旅費を使用しての調査を存分に行うことが困難であった。そのため、調査先での資料収集のために使用することを前提としていたデジタル機器については、一部購入をするにとどめており、当初の計画よりも大幅に少ない状況にあった。 しかし次年度からは、行動制限が緩和されることを受け、積極的に国立国会図書館や沖縄県内の図書館・資料室等での資料調査を適正な形で行えるよう、計画を立てる予定である。また、すでに参加が決定しているインドネシア共和国・バリ島で開催される国際学会や、その他学会等が対面開催されることを受け、そうした研究発表の場に積極的に参加し、知見を深め、研究に関する意見交換を様々な研究者とともに行う予定である。これらに伴い、デジタル機器等の導入についても積極的に検討していく方針である。
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Research Products
(2 results)