2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00300
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
中川 真弓 国際日本文化研究センター, 研究部, 日本学術振興会特別研究員(RPD) (20420416)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 願文 / 石清水八幡宮 / 藤原定家 / 田中宗清 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、石清水八幡宮に関わる願文作品とその製作をめぐる状況について明らかにするところにある。 報告者はこれまでの研究において、石清水八幡宮第34代別当の田中宗清(1190~1237)が、当代の文人・能筆に依頼して作成させた願文類について考察をおこなってきた。その中でも「定家の願文―「石清水八幡宮権別当田中宗清願文案」と「八幡名物」古筆切をめぐって―」(『中世文学』63、2018年6月)では、山形県指定有形文化財の古筆切「藤原定家筆願文」(個人蔵)が、かつて松花堂昭乗が所持していた八幡名物のうち「大願書」と呼ばれたものであったことを指摘した上で、もう一つの八幡名物である「小願書」と合わせ、『続群書類従』神祇部・巻32に所収される「嘉禄元年宗清法印勧進文」の一部と重なることを明らかにした。さらに、以上の考察と調査を踏まえ、これまで作者不詳と見なされてきた「嘉禄元年宗清法印勧進文」が、藤原定家によって作成されたものであったことを明らかにした。 また、藤原定家が子の為家と二人で書いたと考えられる、「定家為家両筆願文」に注目した。報告者は、定家・為家の伝記的資料の一つとして扱われてきたこの仮名願文が、定家・為家自身の私的な内容を述べたものではなく、天理図書館所蔵の定家による「願文案」等と同様に、田中宗清から依頼を受けて作成された願文群の一つであることを明らかにした。すなわち、「定家為家両筆願文」は、石清水八幡宮にかつて所蔵されていたものである。報告者は、2020年度中世文学会秋季大会にて口頭発表をおこなった内容をさらに深め、本年度は「八幡名物「定家・為長両筆」考―石清水八幡宮権別当田中宗清願文群の一つとして」と題した論文を執筆した(『中世文学』66、2021年6月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響により現地で調査できない状況が続いたが、手元にある資料を見直し新たな成果を得られたため。成果の一つとして、「八幡名物「定家・為長両筆」考―石清水八幡宮権別当田中宗清願文群の一つとして」と題した論文を執筆した(『中世文学』66、2021年6月)
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は新型コロナウイルスの影響により調査が制限されていたが、今後は、石清水八幡宮をはじめとする関係機関や所蔵者の意向に添いつつ、これまでできなかった資料の実地調査をおこなう。また、注目すべき資料が出てきた場合は、特に考察の対象として、石清水八幡宮における文学史に位置づける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、資料・文献の調査の機会がなくなり、旅費を使用しての研究ができなかったため。次年度は、より実地での調査に力をいれる予定である。また、学会や研究会が対面式に切り替わった場合は、それに対応する。
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