2021 Fiscal Year Research-status Report
近世中後期における出版メディアの文化史的研究――菊屋七郎兵衛を中心とする
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21K00303
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
速水 香織 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60556653)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近世文学 / 出版メディア / 浮世草子 / 菊屋七郎兵衛 / 山口屋権兵衛 / 藤原長兵衛 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、京都書肆菊屋七郎兵衛の開業から閉業に至る全期間を通じた出版活動調査を開始するとともに、一統と見做される菊屋喜兵衛、また関連する出版書肆として、江戸書肆山口屋権兵衛、伊勢書肆藤原長兵衛の出版物に関する調査を同時進行的に進めた。 このうち、浮世草子出版界との関連についての調査結果を「江戸書肆山口屋権兵衛の出版活動と上方浮世草子」(『日本文学研究ジャーナル』21号)として発表した。 また、近世初期の出版物となる仮名草子『水鏡注目無草』『見ぬ京物語』の全文翻刻を行った(『仮名草子集成』67巻)。同書の書誌調査を実施した結果、『水鏡注目無草』は延宝3年吉野屋惣兵衛板を初板とするが、その後、数度の再板が認められ、うち明和7年板を菊屋七郎兵衛が手掛けている。また菊屋には、一休に関連する書籍群のうち『一休水鏡』『目なし用心集』『一休骸骨』の求板による刊行例があることを把握する等、明和-天明頃における出版物の傾向及び板権の動きの把握するにあたっての示唆的な知見を得る事ができた。 加えて、宝永期以降において、菊屋一統との継続的な取引事例が確認される伊勢書肆藤原長兵衛の出版活動についても調査した。藤原は神宮関係書ならびに神道書の板元として三都に取引先を得ていたことが確認できるが、藤原の取り扱う出版物が、本居宣長の若年時における書籍情報源となっていた可能性について、「宣長時代の出版メディア」と題したセミナーを行った(於本居宣長記念館)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菊屋七郎兵衛の出版物について予定通り情報収集を進めることができた。また、菊屋と直接的な交流を持っていた関係書肆についても活動概要を把握し、その内容を成果として公開できた。
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Strategy for Future Research Activity |
菊屋及び関連する板元による出版物の書誌調査を可能な限り実施する。特に明和-天明期における菊屋を中心とする出版ネットワークの実態把握に努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予定していた資料調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。 2022年度状況が許し次第、必要な調査を計画し、実施する。
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