2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00324
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
氏岡 真士 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (60303484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
閻 小妹 信州大学, 全学教育機構, 特任教授 (70213585)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水滸 |
Outline of Annual Research Achievements |
『水滸後伝』は、『水滸伝』の続書として恐らく最も重要かつ有名なものであり、清初(康熙甲辰三年1664)の原刊本以来、各種のテキストが見られる。それらは原刊本(八巻本)系統と、およそ乾隆三十五年(1770)以降の蔡批本(十巻本)系統とに二大別できる。このうち原刊本系統については、一見原刊本と酷似する紹裕堂翻刻本が普及しているが、じつは従来あまり重視されなかった三多斎刊本『水滸後伝』の方が古く、恐らく紹裕堂翻刻本は原刊本が増刷を重ねて版木が使用に堪えなくなった清代後半の、乾隆三十五年(1770)以降に、三多斎刊本も参照して新たに版を起こした蓋然性が高いこと、また三多斎という書肆が遅くとも18世紀前半の乾隆初期、恐らくは更に早くから、主に江南方面で広く活動していたことなどを、先行研究を批判的に検討しつつ明らかにできた。 『水滸後伝』は、『水滸伝』のうち百回本の後日談として構想されている。百回本は大きく分巻本(二十巻本・百巻本)と不分巻本に分けられ、このうち百巻百回本の容与堂本は、『水滸伝』のテキスト群のうちでも特異な三十巻不分回本の主な底本と目される。研究代表者はこの問題について既に見解を明らかにしているが、近年の新資料出現や内外の研究の進展を踏まえて再検証を進め、より精緻な形で以下の結論を導くことができた。すなわち百巻百回本のうち鍾批本が基づくのは、容与堂本のなかでも天理本や80回残本の系統である。しかし三十巻本の底本は、天理本や80回残本ではなく、また北図本の系統でもなく、やはり内閣本系統の容与堂本と考えられる。なお鍾批本や石渠閣補刊本も百巻百回本だが、これらに基づくのではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染状況の長期化など予期せぬ状況に伴い、たとえば国内外での現地調査等は総じて依然として困難である。しかし優先順位の組み替えや、最近の関連研究に対する検証を批判的に行ない、それらも踏まえて利用可能な資料の精査を進めるなどの方策によって、幸い少なくとも今年度は上記のように研究上一定の進捗が見られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような国内外の状況は、引き続き警戒を要する様相のまま推移することが予想される。とはいえそれを承けてであろうか、たとえば意外な形で資料が出版・公開されるなど、いわば逆方向の予期せぬ動きも見られないわけではない。それを生かしつつ、既に述べたような各種の手段を今後も引き続き講ずることにより、研究上一定の進捗を図ることは可能であると見られるため、それをもって今後の研究の推進方策とする。
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Causes of Carryover |
予定の資料調査に行けなかったため次年度使用額が生じた。その調査費用に使用する計画である。
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