2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K00325
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
二宮 美那子 滋賀大学, 教育学系, 教授 (40738895)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 園林 / 唐代 / 孟浩然 / 王維 |
Outline of Annual Research Achievements |
「園林」及び唐代の詩人・王維の通史的記述を、辞典の一項目として執筆した(明治書院『中国/日本〈漢〉文化大事典』、2024年12月刊行予定)。「園林」の項目では、現在残る園林の姿と史料に表れるそれとにかなりの違いがあることを述べた上で、文献に表れる・描かれる園林は隠逸文化との深い関わりの中で展開してきたことを指摘し、また中国古典園林は「自然鑑賞・余暇の充実の場としてのみならず、時には所有者の生き方に深く関わる場所」であると述べた。 21年度には、長年参加してきた研究会の成果の一部として、川合康三・緑川英樹・好川聡編『韓愈詩訳注』第三冊が出版された。また22年度には「王孟」と併称される盛唐の王維・孟浩然についての研究発表を行い、文学史上の位置づけの検討・両者の交遊の実態・それぞれの山水描写の比較を行い、「江湖と池苑」(葛暁音『山水田園詩派研究』、遼寧大学出版社、1993年)という視点が、両者の詩の分析において有用であることなどを述べた。またこの発表の一部をふくらませ、「孟浩然の旅の詩 : 六朝「行旅」詩の流れをふまえて」(『中国文学報』第九十五冊、2022年4月刊行)を発表した。この論考では「行旅」詩(旅先での感慨や風景を描く詩群)の展開について、『文選』と六朝の詩人たちから孟浩然に至るまでの流れをたどりつつ論じた。「行旅」詩は周囲の自然・環境を主要な描写の対象としており、見知らぬ・遠方の場所を描く行旅詩/個別の・親しみのある場所を描く園林、という対比構造で捉えられる。共に外界の山水を描く点で共通し、園林文学について異なる角度から、より奥行きをもって捉える点で意義がある。
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