2022 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における中国文学の社会的・地域的受容の研究
Project/Area Number |
21K00330
|
Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
藤澤 太郎 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 准教授 (30406847)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 中国近現代文学 / 魯迅 / 鎌田政国 / 種村季弘 / 上野英信 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究成果は下記の通りである。 ①成果の公刊準備:論文「種村季弘の魯迅論「魯迅と希望」―雑誌『望楼』、花田清輝、マニエリスム、『故事新編』受容をキーワードとした覚書」の発表を準備中である。 ②資料の調査・収集:前年度から研究が進んでいた「戦後の左翼文学運動での民間的・実践的な中国近現代文学受容」のテーマについて、2022年度も関連する文芸雑誌の調査・収集を進め、特に発行部数の少ない同人文芸雑誌・学生文芸雑誌の収集の部分で成果を得ている。それをふまえて、論文「種村季弘の魯迅論「魯迅と希望」―雑誌『望楼』、花田清輝、マニエリスム、『故事新編』受容をキーワードとした覚書」と「武田泰淳の魯迅受容―「ひかりごけ」における解釈を中心に(仮題)」の執筆を進め、2023年度内の発表に向けて準備をしているところである。前者の論文は、公的機関等に所蔵されていないためこれまで詳しく分析されることがなかった雑誌『望楼』に掲載された種村季弘の魯迅論「魯迅と希望」について分析したもので、日本の民間的中国文学受容としての『故事新編』受容史の整理という点と種村季弘の文学的出発点の整理という点の双方で意味を持つものになっていると考えている。また、山形県、青森県等日本国内各地域での調査で、それぞれの地域的の雑誌に掲載された中国文学関係記事の収集を行い、これまで扱われていなかった記事の収集という部分で成果を得ることができている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、申請時は「①山形県と秋田県を中心とした地域的・民間的な中国近現代文学受容」と、「②戦後の左翼文学運動での民間的・実践的な中国近現代文学受容」、「③外地引揚者による独自の中国近現代文学の受容」の三つの方向性について、①から③の数字の通りの優先順位で進めることを計画していた。2021年度は、新型コロナウィルス蔓延に起因した制約のため、最も優先して調査を行う予定であった①の部分に進行の遅れが発生していたが、2022年度もその状況は継続しており、②③の部分の進捗が順調である一方で、①の部分の作業は相当程度遅れている状況にある。 ②のテーマについては、2021年度に引き続いて資料調査・分析・執筆が進み、論文「種村季弘の魯迅論「魯迅と希望」―雑誌『望楼』、花田清輝、マニエリスム、『故事新編』受容をキーワードとした覚書」の作成をほぼ完了させて現在発表準備中である。同時に、この資料収集の成果を利用する形で、武田泰淳の魯迅受容についてまとめた論文「武田泰淳の魯迅受容―「ひかりごけ」における解釈を中心に(仮題)」も発表に向けて準備を進めている。 また、このテーマと③の観点を合わせて上野英信の魯迅『故事新編』受容に関わる研究も進めており、2022年度までに資料収集を九州の一部機関の部分を除いて完了し、上記2論文に続く形で論文化している段階である。 ①については、山形県と青森県の地域的雑誌の調査を進め、2021年度までに収集した資料と合わせて各地の民間的組織、教職員組合との関わりという点から整理をしている。申請時の予定からは大幅に遅れているが、2023年度内には当初計画していた調査を完了させ、成果の発表に向けた作業を進めていく予定でいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究申請時に優先的に進める予定でいた「①山形県と秋田県を中心とした地域的・民間的な中国近現代文学受容」に関わるテーマについては、2021年度コロナ禍での移動制限によって進行に大きな制約が生じたため、2021年度報告でも記したように、2022年度は研究の優先順位を変更して、2021年度の段階で順調に進んでいた「②戦後の左翼文学運動での民間的・実践的な中国近現代文学受容」と「③外地引揚者による独自の中国近現代文学の受容」のテーマを優先的に進めることで研究全体の推進を図った。 ②③のテーマについての部分は順調に進んでおり、2023年度もその流れに沿って研究を進める予定でいる。 一方、優先順位を下げた①のテーマについては、結果として2022年度も2021年度の遅れを取り戻すにはいたらなかった。2023年度は②③を含めた全体のバランスに配慮しつつも、この部分の遅れをとり戻すため、特に意を注いで必要なリソースを割いて取り組むこととしたい。
|
Causes of Carryover |
申請時の予定では2021年度に実施することになっていた東北地方等での調査が、コロナウィルス蔓延等の事情のため2022年度に延期となり、その分の取り組みの遅延を2022年度も取り戻すことができなかったため、結果的にそれらの関連部分の支出全体が2023年度まで繰り越される状況となっている。 最終年度である2023年度にこれらの調査を進め、できる限り当初の計画通りの展開となるよう調整していく予定である。
|