2021 Fiscal Year Research-status Report
Affect and Empathy in Contemporary British Fiction after Crisis
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21K00354
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
板倉 厳一郎 関西大学, 文学部, 教授 (20340177)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 英米文学 / イギリス小説 / 危機 / 情動 / 難民 / SNS / イスラム国 / アフガニスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
ベルギーのルーヴェン・カトリック大学主催でZoom開催されたWorld Literature and the Minor: Figuration, Circulation, Translationにて、"'Here's what you tell me': Worlding of Refugee Experiences in A Country of Refuge and Refugee Tales"を発表した。これは、ハンナ・アーレントの「世界」の概念を用いて、A Country of Refugeや現在四巻まで刊行されているRefugee Talesのシリーズが創り出す「世界」を論じたものである。日本での難民文学研究は充分とは言えず、学会では有益な知見を得られた。 ラウトリッジ社から2022年中に出版予定の論文集Fear, Crisis and Anxiety in Europe: A Multidisciplinary Approach(Carmen Zamorano Llena, Jonas Stier, Billy Gray編)に、"Virtual Terrorists, Virtual Anxiety: Affect and Technology in Kamila Shamsie's Home Fire"を寄稿した。これは、カーミラ・シャムシーの『ホーム・ファイアー』をSNS使用と情動という側面から論じたものである。掲載が決定し、現在校正中である。 論文集Wars, Wounds and Words: Narratives of Trauma in South Asian Literatureに、編者Goutam Karmakar(バラバザー・ビクラム・チュードゥー・メモリアル大学)より投稿の依頼があり、"Kaboul mon Hiroshima: Trauma and Narration in Atiq Rahimi's The Patience Stone"を寄稿した。これは、アティク・ラヒーミーの『サンゲ・サブール──忍耐の石』を、一方で映画『二十四時間の情事』やキャシー・カルースによるその解釈の「書き直し」として、一方でアフガニスタンにおけるペルシャ語文学の伝統の継承者として読み直したものである。ラヒーミーは厳密に言えばイギリス文学ではないが、視野を広げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は新型コロナ感染症の感染拡大によりオンラインと対面授業を閉講せざるを得ない状況にあり、秋学期には予測不可能な状況の変化で授業担当数と校務負担が増え、研究に時間が割けなかった。また、海外雑誌に審査中であった論文一点が不採用になったため、研究の見直しを強いられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には現在投稿中・投稿準備中の論考を書き終える。前回の研究課題(課題番号: 17K02524)との継続性が強いイスラム国を扱った作品についての研究に取り組む。 そのうえで、研究開始初年度に予定していた9.11同時多発テロ事件の余波で生み出された作品群の再検討を始める。イギリス文学ではないが、アティク・ラヒーミー論("Kaboul mon Hiroshima: Trauma and Narration in Atiq Rahimi's The Patience Stone")は投稿中であるが、これに加えてジョン・ル・カレやモーシン・ハミッドを論じる予定である。 2023年度には、難民危機を扱う文学を研究する予定である。現時点ではアリ・スミスの四季四部作と難民文学アンソロジーを論じる予定であるが、昨今のウクライナにおける戦争の状況次第では、新しい作品を視野に入れる必要が出て来る可能性がある。
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Causes of Carryover |
2021年度は勤務状況の変化等により研究が遅れたため、パソコンおよび関連機器(プリンタ複合機など)の購入ができなかった。 2022年度の夏期休業前までにパソコンおよび関連機器(プリンタ複合機など)を購入し、安定した研究環境を整える。また、現在執筆中の論考の完成に必要な資料を購入したうえで、研究初年度に計画していた9.11関連の作品の研究に必要な未入手の資料を購入する。
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Research Products
(1 results)