2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Amorphous Agencies and Personal Democracy in William Faulkner's Later Novels
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21K00357
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
藤野 功一 西南学院大学, 外国語学部, 教授 (40321294)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 都市 / ニューヨーク / 孤立と連帯 / ウィリアム・フォークナー / 不定形の行動主体 / 個人的民主主義 / 小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究として、まず、1920年代に野心を抱いて都市ニューヨークにやってきた若者の孤独と連帯を描いた複数のアメリカ文学作品についての考察、研究を行った。その研究成果を発表するにあたって、まず日本英文学会九州支部第74回大会シンポジウム「都市と連帯」にて口頭発表(基調)「連帯の幻想と孤独の現実-アンダーソンが予言し、カウリーが検証した1920年代のニューヨーク」(2021年10月16日)を行い、その内容をプロシーディング「連帯の幻想と孤独の現実-アンダーソンが予言し、カウリーが検証した1920年代のニューヨーク」(2022年2月9日)にて発表後、論文「連帯の幻想と孤独の現実-アンダーソンが予言し、カウリーが検証した1920年代のニューヨーク 」(2022年2月28日)として完成させた。 また、日本文学において人間の孤立と連帯を考察し続けている芥川賞作家、沼田信佑氏をお招きし、日本英文学会九州支部第74回大会で特別講演「孤立と連帯」(2021年10月17日)を行い、司会と聞き手として藤野、また、世界文学研究の専門とする聞き手としてユスチナ・カシャ先生を加え、対話形式による講演会を行った。さらに西南学院大学文学部英文学科主催WEBオンライン講演会「小説の書き方」(2021年10月19日)でも、小説家沼田真佑氏に藤野がインタビューを行った。 ウィリアム・フォークナーの後期作品における不定形の行動主体についての研究は、著作としてアメリカの出版社から書き下ろしとして発表する予定である。そのため、本年度は約17万語の著作の下書きを行いつつ、アメリカの出版社Lexington Booksに企画書を提出した。この企画書が認められて、出版契約を結ぶことができた。これらの研究成果が公表されたことを知らせ、また、著作の進捗状況を報告するため、ホームページを開設した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最終的な目標は、「フォークナーの後期作品群における不定形の行動主体と個人的民主主義の研究」を行った成果を英文による著作としてまとめ、アメリカの出版社から書き下ろしとして出版することにある。そのため、初年度として著作の下書きを約17万語書き進めつつ、著作のイントロダクションとなる部分を含めた英文の企画書をアメリカの出版社に提出した。この企画書が認められ、Lexington Booksと出版契約を結ぶことができた。 なお、この研究におけるキーワードである「不定形の行動主体(amorphous agency)」と「個人的民主主義(personal democracy)」は、どちらもウィリアム・フォークナーの後期作品にのみ当てはまるものではなく、フォークナー 以外の20世紀アメリカ文学や、現代の日本文学においても見出される重要なテーマである。このことを明らかにするために、まず、1920年代に野心を抱いて都市ニューヨークにやってきた若者の孤独と連帯を描いた複数のアメリカ文学作品についての考察し、論文「連帯の幻想と孤独の現実―アンダーソンが予言し、カウリーが検証した1920年代のニューヨーク 」(2022年2月28日)として完成させた。また、日本文学において人間の孤立と連帯を考察しつづけている芥川賞作家、沼田信佑氏と対談を行い、その成果として、対話形式、インタビュー形式の講演会をウェブにて配信した。 本研究課題の進捗状況を報告するためのホームページも公開し、初年度の研究課題の進捗状況は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、Lexington Books との契約通り、2023年12月1日までに研究成果をまとめた完成原稿を送ることができるよう、「フォークナーの後期作品群における不定形の行動主体と個人的民主主義の研究」の考察を進める。 また、本研究課題の重要なキーワードである「個人的民主主義(personal democracy)」は学生の思考を深めるためにも重要な概念であり、英語教育においても具体的な教育方法にも発展させることができることを示すため、日本英文学会第94回大会で招聘発表「オンライン授業における対話と文学読解:The Things They CarriedをCerteauの言葉とともに読む」を行う。 日本英文学会九州支部第74回大会シンポジウム「都市と連帯」を発展させ、論集『都市と連帯: 文学的ニューヨークの探究』を刊行する予定である。そこでの藤野の論文は、ラルフ・エリスンの『見えない人間』を取り上げて、「不定形の行動主体(amorphous agency)」について論じるため、原稿を書き進める。。 また、ホームページを活用して、研究成果が公表されたことを知らせ、著作の進捗状況を報告しつつ、同時にホームページにも本研究課題にかかわる新たな要素を付け加えたい。
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Causes of Carryover |
当該年度の実支出額と当該年度の所要額の差が1円であったため次年度使用額1円が生じた。物品費に使用する予定。
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