2023 Fiscal Year Research-status Report
An Intertextual Study of the Visual Reception of Shakespearean Characters
Project/Area Number |
21K00361
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大島 久雄 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (80203769)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シェイクスピア / キャラクター / インターテクスチュアリティ / 視覚的受容 / 黒澤明 / 小林政広 / 老い / 差別 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的コロナ感染も収束に向かったが、海外での調査・資料収集は困難であったために、国内で調査・研究を行い、近年の日本の映画と舞台を中心にシェイクスピア登場人物の視覚的受容事例インターテクスチュアリティ研究を進めた。2014年ソウルにて韓国国立劇場のこけら落としとして初演された鄭義信作・演出『歌うシャイロック』は2017年大阪公演に続き、2023年には南座・博多座・サンシャイン劇場で再演された。ミュージカルに生まれ変わったシェイクスピア喜劇においてシャイロックは、劇の中心的な存在となり、在日二世の鄭義信のマイノリティに対する共感や差別批判が随所に見られる。人種・ジェンダー等の現代的な視点からのキャラクター受容として分析し、韓国シェイクスピア協会がソウル国立大学で開催した60周年記念国際学会 "Between Proximity and Distance Transposing Shakespeare Today"に参加して研究成果を発表した。この研究成果は、韓国シェイクスピア協会刊行の論集に論文として発表するために準備を進めている。 映画におけるシェイクスピア登場人物受容のインターテクスチュアリティ研究としては、視覚的な受容における役者の貢献を分析するために仲代達矢に焦点をあて、『リア王』主人公リアを仲代が演じた黒澤明監督『乱』(1985)と小林政広監督『海辺のリア』(2016)を取り上げて、それぞれの映画において現代日本的な社会問題でもある老いの問題がいかに仲代演ずる主人公キャラクターに反映され映画化されているかについてインターテクスチュアリティ研究を行った。この事例研究の萌芽的成果は2021年に国際学会で発表したが、その後、米国シェイクスピア研究者の『リア王』論集に採択され、2023年に視覚的資料収集を実施し、さらに研究を深めて論を完成・寄稿し、2024年度出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シェイクスピア登場人物の視覚的受容インターテクスチュアリティ研究に関しては事例研究により進めてその成果は国際学会発表や論文として発表している。韓国シェイクスピア協会60周年記念国際学会 "Between Proximity and Distance Transposing Shakespeare Today"(ソウル国立大学)にて研究成果を発表して好評を博し、韓国シェイクスピア協会刊行論集に論文として発表するために準備を進めている。 シェイクスピア登場人物視覚的受容における役者の演技の重要性を明らかにするため、仲代達矢に焦点をあて、『リア王』主人公リアを仲代が演じた黒澤明監督『乱』(1985)と小林政広監督『海辺のリア』(2016)を取り上げて現代のシェイクスピア映画に関するインターテクスチュアリティ事例研究は、国際的なシェイクスピア研究者グループによる共著としての『リア王』論集に採択されて2024年度に出版が予定されている。 研究成果の社会的還元として11月には九州大学芸術工学部主催の市民対象公開講座「レコードで聴くシェイクスピア俳優・キャラクターの魅力」ではシェイクスピア絵画・レコードを取り上げて登場人物受容に関して講義を行い、アンケートに示されているように、好評を博した。 以上の点からおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、過去3年間の研究を振り返って研究方法の見直しを行いながらシェイクスピア劇登場人物視覚的受容インターテクスチュアリティ・ケーススタディをさらに積み重ね、関連研究資料・文献収集を行い、登場人物図像視覚的受容インターテクスチュアリティ研究のさらなる深化を目指す。具体的には、視覚的受容における絵画・図像・舞台上演・映画と社会との関係性についてインターテクスチュアリティ研究の体系化を進めて、研究成果を海外開催国際学会で発表し、論文執筆・掲載につなげていく。 昨年の韓国シェイクスピア学会開催国際学会での研究発表を論文化して、韓国シェイクスピア学会刊行論集に投稿する。『リア王』視覚受容における日本的なリア王像に関する研究は海外研究者とのシェイクスピア研究書共著として今年発行の予定である。その他の劇作品を取り上げた登場人物視覚的受容に関するインターテクスチュアリティ研究については、すでに6月に開催される 40th International Conference Psychology and the Arts (ザグレブ大学)における発表が承認されており、国内研究会・学会においても関連研究の招待講演・研究発表が9月と3月に決まっているので、成果発表の一環として研究の発展と深化に取り組み、視覚的受容インターテクスチュアリティ研究の体系化に努める。
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Causes of Carryover |
2023年度に研究発表を行った国際学会が福岡に近い韓国ソウルで開催されたため渡航費があまりかからず次年度使用額が発生した。今年度に参加予定の国際学会はクロアチアで開催され、成果発表で東北と関西への出張も予定しているため、そのための旅費に使用し、残は最終的な報告書の作成・印刷・郵送費に使用する予定である。
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