2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Animal Metaphors and Social Conditions in Early Modern British Plays
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21K00376
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
本多 まりえ 明治学院大学, 文学部, 准教授 (60546878)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動物 / 人間 / 菜食 / 肉食 / 狩猟 / ピタゴラス / モンテーニュ / イソップ寓話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はシェイクスピアとベン・ジョンソンの劇作品における鹿や狐などの動物表象や人間と動物との関係に焦点を当て、肉食と菜食、狩猟、ピタゴラスやモンテーニュらによる動物愛護論、イソップの動物に纏わる寓話などについて考察をした。そして、その成果を学会発表と論文で発表した。具体的には、6月にESRA (the European Shakespeare Research Association) 主催のオンライン学会に参加し、“‘Roots’ in Timon of Athens and Pythagoras’s Vegetarianism” という題の発表をし、シェイクスピアの『アテネのタイモン』に見られる"roots"への称賛とピタゴラスの菜食主義などを検証し、コメンテイターのJohn Drakakis氏やコーディネイターのAlison Findlay氏、登壇者のLisa Hopikins氏らから有意義なコメントを頂いた。また、10月には、The International Conference on Ecocriticism and Environmental Studiesというオンライン学会で “Hunting, Meat-Eating, and Vegetarianism in As You Like It” という題の発表をし、作中に見られる鹿狩りや肉食への批判などを考察した。そして、この原稿を基に、2月に『明治学院大学英文英語論叢』第225号にて “Hunting, Venison, and Pacifism in As You Like It” という題の論文を発表した。さらに、10月には十七世紀英文学会編『十七世紀英文学における病と癒し』という論文集に “Volpone as a Mountebank Show” という題の論文を投稿したが、現在まだ審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は1年間の研究休暇期の年で、予想以上に研究が進み、海外のオンライン学会で2回発表ができた。当初はシェイクスピアの『アテネのタイモン』と『お気に召すまま』について学会発表や論文発表を行い、余裕があればベン・ジョンソンのいくつかの作品を分析することを目指していた。結果として、『アテネのタイモン』と『お気に召すまま』について口頭発表や論文発表を行い、ジョンソンの『ヴォルポーネ』についても論文にまとめて投稿することが出来た。アぺマンタスやタイモンが菜食を称える『アテネのタイモン』に関しては、菜食をテーマとする論文が少数あるが、「菜食主義の父」と呼ばれ、動物愛護の立場から肉食を非難し菜食を推奨したピタゴラス、プルタルコス、モンテーニュなどの文献を参照したものはなかったため、シェイクスピアが『アテネのタイモン』を執筆する際に彼らから受けた影響や本作品における動物と人間の関係について学会発表をした。『お気に召すまま』に見られる鹿狩り批判は、既に先行研究が多くあるが、テクストに散見される動物の比喩(人間を動物に例える比喩)に着目することで、動物と人間の関係ひいては人間同士の関係を考察し、学会発表や論文発表をすることが出来た。また、当初は計画になかったが、研究の過程の中で、『お気に召すまま』の材源であるトマス・ロッジの散文作品『ロザリンド』を考察することで、『お気に召すまま』に見られる狩猟や肉食に関する見解が独創的であることを発見することができ、シェイクスピアは動物に対し他の作家とは異なる態度であったという仮説が補強された。さらに、ジョンソンについては、『ヴォルポーネ』(イタリア語で「狐」を意味する)における寓意的な名前の登場人物やイソップ寓話の引用を、当時イギリスやヨーロッパで行われていた動物も登場するやぶ医者の見世物(mountebank show)という視点から論文にまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きシェイクスピア、ベン・ジョンソン、およびその他エリザベス朝、ジェイムズ朝の作家の劇作品における動物表象と人間と動物の関係について、テクスト分析や先行研究う、動物に関する言説(ピタゴラス、プリニウス、モンテーニュ、フィリップ・スタッブスらピューリタンによる肉食批判と動物愛護論、プリニウスやエドワード・トップセルなどの博物誌など)を調査しながら考察を進める。これまで考察を重ねてきた熊や鹿に加え、犬やライオン、狼、鳥類なども視野に入れ、研究の幅を広げたい。まずは、シェイクスピアの『ヴェローナの二紳士』や『夏の夜の夢』、ジョンソンの『みな癖が治り』、およびウィリアム・ローリー、トマス・デッカー、ジョン・フォード共作の『エドモントンの魔女』など、犬が舞台に登場する作品に着目し、犬の表象を考察する予定である。『ヴェローナの二紳士』や『夏の夜の夢』に登場する犬は熊いじめで使われる本物の犬であったとみなす批評家が多い。他方、『エドモントンの魔女』に出てくる魔女の使い魔の黒い犬トムは、台詞を話し、俳優によって演じられたと考えられている。作品中の動物表象のみならず、舞台で動物がどのように演じられたかについても検証したい。さらに、シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』における鹿狩りや熊いじめへの言及、ジョンソンの『エピシーン』や先述のホープ座で演じられた『バーソロミュー・フェア』における熊いじめへの言及についても、調査研究をし、動物と人間の関係のみならず、劇場と熊いじめとの関係についても探究していく予定である。(熊いじめとは鎖に繋がれた熊に対し、凶暴な犬何匹かを攻撃させる娯楽で演劇と並び人気があった。)そして最終的には、シェイクスピアの劇作品と同時代の様々な劇作品における動物の表象や動物の比喩を比較検討することで、シェイクスピアの動物に対する態度の特異性を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に、海外から取り寄せた本が数冊届かないという予期せぬ事態が生じたため、代わりに急遽、国内に在庫があり、必要な図書を注文したところ、386円が残った。その時点では、もはや国内にある図書や文具など、差し迫って必要なものはなかったため、翌年度に繰り越し、海外から図書を注文する際に充てることにした。
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Research Products
(3 results)