2022 Fiscal Year Research-status Report
中世初期英語散文Ancrene Wisse におけるアンセルムスの影響の研究
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21K00378
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
井野崎 千代子 京都先端科学大学, 教育開発センター, 嘱託講師 (20213192)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | conscience / Ancrene Wisse / Anselm / Meditatione |
Outline of Annual Research Achievements |
1) Ancrene Wisse (13C初期) で引用されているアンセルムス (11 C) の"Meditatione I"における conscienceに関わる部分の類似表現を、アンセルムスの全作品において検証することを第一の目標とした。全3編の Meditationesを検証したのち、全19編のOrationesを同じように検証した。 2) これらMeditationesとOrationesを検証していた際、アンセルムスの意識の方向性が、常に一方に向かうのではなく、多面的ベクトルがあることがわかった。アンセルムスの権威であるSouthernによると、アンセルムスはそれまでの祈りとは異なる新しい祈りを生み出したということだが、この「意識の多方向性」がその新しさに何らかの関係があるのかを追求したいと思い始めた。アンセルムスの祈りの中の意識の方向性については、「カンタベリのアンセルムスの『瞑想』と『祈り』:Ancrene Wisse の引用元としての一考察(予行)」として、広島英語研究会10月月例会にてオンライン発表、同タイトルで日本中世英語英文学会第38回全国大会、福井大学にて12月にオンライン発表を行った。内容的にはまだ初期データであるので、更なる分析と、アンセルムスよりも古い文献との比較が求められると考える。 3) アンセルムスが強く影響を受け、彼の思考そのものとなっているとも言われている、4Cのアウグスチヌスの作品の中に、アンセルムスの "Meditatione I" に関連するものの有無を検証するため、”Confessiones” を読み始めた。 4) 勤務先の研究・連携センター主催のポスター発表会にて、「初めてのconscience:背景としてのアンセルムス」の発表を行った(3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の第一目標は、アンセルムスの作品を出来るだけ読んで、その中に "Meditatione I" のconscienceに相当する表現を検証することであったが、Meditationes とOrationesを終えた時点で、その背景を知る必要があると判断し、アウグスチヌスの作品を読み始めたり、権威 Southernが指摘する古い同等物との比較に向けて、その資料を手に入れる方向に向いたため、アンセルムスのその他の作品を読むことが後回しになっている。しかしながら、この作業はどうしても必要なものであるため、方向的には誤っているものではなく、その場で少し留まっている形になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) アンセルムスの背景となっているアウグスチヌスの作品のうち、conscienceに強い関わりがあると思われる "Confessiones" をまず読んで理解し、アンセルムスのより深い理解に繋げる。
2) Southernが例として挙げる、アンセルムスよりも古い同等物を、オックスフォード大学図書館を訪ねて現物を見ることや、その内容を比較分析することによって、アンセルムスの祈りの新しさについて具体的な点を浮かび上がらせることができるよう努めたい。
3) アンセルムスの他の作品である手紙と神学書を読み進め、conscienceについて考察するデータを集めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で国際学会、国内学会が軒並みオンライン開催となり、予算計上していた旅費などの支出がなかったが、次年度は開催予定であるため、支出を予定している。
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