2021 Fiscal Year Research-status Report
トランスナショナルなコンテクストにおける現代アイルランド女性詩の挑戦と展望
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21K00387
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 寛子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90336917)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アイルランド文学 / 女性詩人 / 英語圏文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「現代アイルランド女性詩人とアイルランド語の伝統(フォークロア、伝説、神話)」をテーマに、詩の教授(Professor of poetry) を務めた三人の女性詩人エレーン・ニクィリャノーン、ポーラ・ミーハン、ヌーラ・ニゴーノルと「アイルランド語の伝統」の関係についての考察を進めた。アイルランド語の伝統がそれぞれにとってどういた位置付けにあるかの検討を行い、論文を執筆中である。三者の言語観、言葉の力への思い入れに、アイルランド語から英語への歴史的言語変化、アイルランド語観がどう影響しているかを検討した。歴史的観点から、この三人の現代詩人の意識と、19世紀末の文芸復興、アイルランド語復興運動の時期の作家たちの意識との違いを検討した。さらに、アイルランドの神話、伝説、フォークロアをどのように作品に取り入れているかという問題を詳細に追及している。 上記の目的を達成するために、ミーハンの作品The Statue of the Virgin at Granard SpeaksとThe Solace of Artemisを精読し、これらについての先行研究とリサーチを進めた。また、ニクィリャノーンが英訳したヌーラ・ニゴーノルのアイルランド語詩Oscailt an Tuama (Opening the Tomb)とTuras na Scri/ne (Pilgrimage to the Shrine)の原詩と英訳を比較検討した。また、ニゴーノルの詩篇「人魚」のマイケル・ハートネット訳とニクィリャノーン訳を比較しその違いの意味を考察した。人魚が陸に上がってきた状態への関心がニゴーノルとニクィリャノーンの間で共有されていることは二人のエッセイからも分かる。ニクィリャノーンの詩篇 Translations, The Girl Who Married the Reindeer, The Lady’s Tower, The Sun-fish, The Architectural Metaphor を精読し、ニクィリャノーンにとっての「異界」についての考察を深め、ニゴーノルとの接点と違いを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で海外渡航のタイミングが難しく、研究調査、インタビューのための海外出張ができなかったが、オンラインによる学会参加やメールによるやり取りにより論文の準備は順調に進んでいる。
女性詩人たちの多様な関心と詩風、哲学、言語観は入手可能なインタビューとエッセイからかなりのことが分かり、直接尋ねたいことを明確化する手掛かりが得られた。
ネット上で詩の朗読や講演の記録を網羅的に視聴して必要な情報を確保できた。全詩集、選詩集の読解を進め、精読する詩、分析する詩、論文で扱う詩、訳と解説を作成する詩の選別に入った。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビューができなかったため、図書館、インターネット、人脈を通じた資料収集の方法を模索続けてきたが、出張のタイミングを掴むことが今年度の目標である。
作品の精読に集中することでアイルランドでの調査が可能になってからすべきことが明確になってきたため、海外調査は可能な限り実現させたい。
女性詩人たちが英語で書いた詩をアイルランド語に翻訳されているケース、その逆の場合を多数発見し、アイルランド語版と英語版の綿密な比較が効果を上げているため、今後もこの作業を鋭意進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受け、インタビュー、調査、資料収集のための出張ができなかった。出張が可能になった際にも想定外の航空運賃などが危惧される。十分な資金を確保するために今回は使用を控えることにした。
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