2021 Fiscal Year Research-status Report
褒める表現技術ーイギリス17世紀におけるオードの淵源と展開
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21K00390
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉中 孝志 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (30230775)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オード / ベン・ジョンソン / エイブラハム・カウリー / アンドリュー・マーヴェル / ジョン・ドライデン |
Outline of Annual Research Achievements |
英国17世紀全般にわたるオードの特質と変容過程を個々の詩人と作品を具体的に分析しつつ体系化する試みである本研究の初年度は、以下の書籍を精査することから開始した。Robert Shafer, The English Ode to 1660 (Princeton and London, 1918)、George N. Shuster, The English Ode from Milton to Keats (New York, 1940)、Carol Maddison, Apollo and The Nine: A History of the Ode (London, 1960) これら20世紀前半の包括的な先行研究に、そこに欠けていた現代批評理論を援用することで新たな知見を加え、17世紀のオードの歴史を分析し、2021年10月には、概観として再構築した第一稿を完成した。その際に本研究における考察対象としたのは、Ben Jonson の The Cary-Morison Ode、Abraham Cowley の‘The Praise of Pindar’、Andrew Marvell の‘Horatian Ode’、John Dryden の‘Song for St Cecilia’s Day’ であった。 その後、今回の17世紀英詩に関する国際共同研究の代表者であるLaura L. Knoppers (University of Notre Dame) との意見交換と校閲を経て、Cowley のセクションに新たな詩の分析を加えた。 また、17世紀のオードが変容、展開されていく通過点の先にある18、19世紀のオードの特徴を捉えるためトマス・グレイ、ウィリアム・ワーズワスのオードを考察し、ハーディの小説に影響を与えている例を論文、書籍として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期段階として、国内単独での調査研究に基づき、オードの17世紀英国における変容を概観する研究論文の作成は終えることが出来たが、新型コロナウィルスの流行により、参加を予定していた国際学会が中止、もしくはオンライン開催となり、本研究に資する複数の研究者らとの個別の意見交換が、充分な質と量においてなされなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目前半は、ジョンソンの全オード作品を精査し、オードに関してどのようにギリシア・ローマの古典的ジャンルが使われ、詩人はなぜそれを必要としたかを探求する。その際に挽歌や書簡のジャンルに典型的に表れるような「忠告」の要素がオードに組み込まれる場合を詳細に分析して、オードの政治的役割を検証したい。また英文学史において「ベンの一族」 (the Tribe of Ben) と称される王党派の詩人たち、特に Robert Herrick (1591-1674) らの駆使したアナクレオン風のオードについて17世紀の政治思想面からの観点を加えて分析するための調査を行う。 さらに同年度後半には、カウリーの全オード作品、特に Pindarique Odes を精査して、ピンダロスの古典的な形式が不規則な韻律と形式へと変容し、カウリーによって所謂 irregular odes が確立していった必然性を考察する。さらに彼が、友人である王立協会の会員などの知的英雄を讃える際に、元来、競技の勝者を讃えた伝統的なオードが変容している様態とその理由を考察する。 次年度(2022年度)10月に開催予定の日本英文学会中国四国支部大会のシンポジウム「英文学と音楽/音楽性」において、歌われることを前提とするオードの有する特質をジョン・ドライデンのオードを分析することで提示する予定である。また、海外の研究者とは、限定的ではあるが、メールによる意見交換を継続しつつ、国際学会への参加を期したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行のため、海外出張が出来なかったため。渡航可能時に国際学会へ参加することで執行する。
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Research Products
(3 results)