2023 Fiscal Year Research-status Report
ロスト・ジェネレーションの詩学と「危機の20年」の文学的社会史
Project/Area Number |
21K00393
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉田 朋正 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40305404)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | モダニズム / ロスト・ジェネレーション / 第一次世界大戦 / 狂騒の1920年代 / 危機の20年 / メディア論 / 1920年代 / 1930年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来通り、M. Cowley、Edmund Wilsonらの個別的研究を進めるとともに、James Joyce、Harry Crosbyらの発表媒体となったTransitionなどのリトルマガジンの調査を行った。また今年度は改めて第一次世界大戦の前後に立ち戻り、Paul Fussellらの研究書や二次資料の調査を通じて、紳士志願兵として参戦した作家たちとWW1の関わりについて詳しい調査を行った。 前年までと同じく、本研究では当時の文化領域を実際に造り上げ、条件づけていた政治・経済的な現実、テクノロジーやメディアの実態をもまた広く調査の対象としている。今年度は前述のごとく、世界がホブズボームのいわゆる「長い19世紀」を脱し、「アメリカの世紀」へと突入する最大の機会原因となったGreat Warの内実を検証することに多くの時間を費やした。現代的兵器が多数発明・投入された人類最初の世界規模の総力戦は、同時にまた、それぞれにかなり事情の違った複数の戦争が組み合わさった、複雑な政治的プロセスと見なすことも可能である。そうした大きな状況の把握と、そこに捲き込まれた個人──特に、末端の紳士志願兵として加わった若い兵士たち──の凄惨な体験の理解が、本研究では同時に為されなければならない。このような相互補完的な視点は、年度中に研究代表者が翻訳を刊行したEmile Simpsonによる優れた現代的戦争論、War from the Ground Up (2012)でも鮮やかに示された着眼点であり、今年度は特にこの視点から、これまでの研究内容を振り返ることになった。 なお同書は、現代のアフガニスタン紛争に加え、WW1の戦争詩人サスーンや『西部戦線異状なし』のボイメルにも目を向けた着眼の広い一冊であり、本研究を前進させるのに大いに益するものであったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果としては研究テーマと関連する刊行物(上記の翻訳など)を発表できたのみだが、研究自体は順調に進んでおり、主要な研究成果もまもなく発表できるものと考えている。また同時進行している他の研究プロジェクト(メディア論を通じた文学・芸術史の再検証)とも、現在の研究内容はいっそう有意義な形で結びつきつつあると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、1920-30年代の欧州およびアメリカの政治・経済状況の調査を行いながら、当時渡欧したアメリカ人文学者や芸術家の動向を精査する。前回記入した現代的戦争論の翻訳の仕事も終え、「ロスト・ジェネレーション」の作家たちが身を投じた第一次世界大戦の実態について、ますます精査の目を向ける必要性を感じている。ダダのような芸術運動と戦争の影響を論じることが当面の目標となる。
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Causes of Carryover |
一部の洋図書、資料データベース化に使用する予定であった非破壊型ブックスキャナ(もしくはデジタルカメラ等)の種別について、なお検討中であるため予算を次期に当てることとした。
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