2022 Fiscal Year Research-status Report
戦間期英国小説におけるセクシュアリティ表象と「クローゼット」の力学を読み解く
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21K00399
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
長島 佐恵子 中央大学, 法学部, 教授 (90439555)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイセクシュアリティ表象 / クローゼット / レズビアン文学 / クィア・リーディング / 戦間期英国小説 / シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度もコロナ禍の影響が続く中、海外での文献調査を延期することになった。そこで、バイセクシュアリティ表象と可視・不可視の問題について理論の展開を追う文献調査を継続し、特にレズビアン表象と可視・不可視の問題との重なりとずれの検証を試みた。その成果として、カルチュラル・スタディーズ学会の「カルチュラル・タイフーン2022」(2022年9月17日、ハイブリッド開催)において「バイセクシュアル・レズビアン研究とフェミニズム」というパネル発表(オンライン参加)を企画し、全体の司会および「バイセクシュアル・クローゼットを考える」と題した個人発表を行った。レズビアン・バイセクシュアル研究とまとめることで生じるバイセクシュアル表象の読み取りにくさを指摘し、近年のアセクシュアリティ研究などと接合したバイセクシュアル読解の可能性を提起した。 また、そこで整理したバイセクシュアリティの理論を参照しながら、レズビアン文学として読まれることの多いシルヴィア・タウンゼンド・ウォーナーの小説について、Summer Will Show(1936)を中心に、あらためてバイセクシュアル小説として読み解く作業に着手した。ウォーナーおよび彼女のパートナーでやはり作家であったヴァレンタイン・アクランド関連の文献収集を進めた。分析の途中経過をまとめたものは研究会で共有し、時代背景や作者の政治的なコミットメントと作品のセクシュアリティ表象の関係などについてのコメントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響が一定程度続く中、予定していた海外での文献収集を再び延期することになった。そのため、同時代の作品受容に関する歴史史料の確認が限定され、理論分析の方へのシフトを継続することになった。その中でバイセクシュアリティについて検討することの重要性が確認できたが、歴史的文脈に位置付けての作品分析については、進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、バイセクシュアリティ表象とクローゼット概念についての検討の重要性が確認されたので、それを踏まえた作品分析を進めたい。具体的には、ウォーナー、ボウエン、ウォーの小説について、バイセクシュアル・ナラティブとして読解する可能性を拓き、それぞれ2023年度内に論文にまとめて投稿することを目指す。なお、イギリスに渡航しての資料収集に困難がある場合には、オンラインでのアクセスや取り寄せが可能な資料を利用していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により海外での調査ができなかったため残額が生じた。2023年度に調査渡航を実施できればその追加予算とするが、研究の進捗と合わせ考えて渡航しない場合には、資料の購入に充てる。
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